夏の穂高連邦縦走(第1部)


全く天候に恵まれなかった2017年の夏の穂高縦走。
北穂高岳〜涸沢岳〜奥穂高岳〜前穂高岳という予定だったのが雨と霧のため奥穂高岳のみの登頂という大幅な計画の変更を迫られることになりました。
今年は昨年と異なり残雪が多いのが特徴的でした。






10時25分
雨の横尾に到着。
ただでさえ蒸し暑いこの時期。雨でレインウェアを着ていると不快感が半端無いです。レインウェアがGore-Tex素材でよかったと思う瞬間です。

今回大失敗をしてしまいました。何かと言うと「ザックカバーを忘れてきた」という最低のミス。上高地で準備していたらザックの中のいつもの場所にカバーが入っていない!多分5月に登った後ザックカバーを洗ってそのままザックに入れずにしまったのが原因かと・・・ でもって止むを得ず小屋で買うことに。明神小屋では売っておらず徳沢園で購入。予定外支出・・・

さあ、今日も横尾大橋を渡って涸沢へ向かっていきます。





10時47分
横尾から涸沢へ向かってしばらく進んで行き、いよいよ登りが始まるという部分ですが、この部分が整備されており岩が階段状に組まれていてびっくりしました。従来でしたらいきなり岩を登っていくような状況で「よし!かんばるぞ!」と気合入れられたのですが。
ま、整備されること自体はいいことだと思うし、ここまで整備するのはさぞかし大変だったと思います。感謝をしつつ石組みの階段を登って行きます。





11時12分
屏風岩が全く見えません。霧に覆われ、なんだか人の立ち入ってはいけない聖域のような雰囲気を醸し出しています。
今の時点で雨はほとんど降っていません。が、完全に雨雲が去ったというわけではなさそうです。周囲は完全にガスっていて何も見えません。
そういえば冬山を除き、ここのところずっと初日は雨です。昨年秋、今年の春、そして今日。なんだか嫌ですね・・・





11時21分
本谷橋到着。
気のせいかどうか、若干水量が多いような気がします。
ここで朝食(というか昼ご飯)を食べることにします。雨は止んでいるのでレインウェアを脱ぎます。一気に涼しくなります。
今日は日差しがないのでそのぶん楽です。そういう意味では不幸中の幸いなのかもしれませんね。そういえば念のために持ってきた日焼け止めは全く出番がなかったです。ほんと日焼け止めを塗りたくるくらい天気が良ければ、と思います。





11時39分
さて、熱くなった身体もだいぶクールダウンすることができました。だいぶ落ち着いてきたところで涸沢に向けて出発することにします。

本谷橋から先は本格的な登りになります。なので休憩後だからといって飛ばすと大変な思いをすることになってしまいます。自分もゆっくりしたペースで登ります。今日は涸沢までですからどんなに時間をかけても午後一番で到着できるでしょう。気持ち的にも楽です。





12時20分
昨年大規模に崩落した箇所はびっくりするほど整備されていました。ちょうど5月にきた時に崩落していた場所の上部になります。普通に歩いていけるのですが、それでも上を見上げると明らかに不安定でいつ崩れてきてもおかしくないような状況です。
看板でも警告されている通りここは立ち止まらずに足早に切り抜けていきます。





12時51分
さて、涸沢まで目前というところで残雪が現れます。ほぼ例年並みの場所だと思います。昨年は異常なほど雪が少なく残雪そのものがなかったのですが、 今回はしっかりと雪の上を歩いていきます。
アイゼンは必要ないレベルです。ここの残雪が消えるのも時間の問題でしょう。





13時17分
涸沢到着。
まだまだ雪が多いです。テントサイトも7割くらいはまだ雪の下でしょうか。
それにしても雪の上を吹き抜けてくる風が心地よいこと。天然のクーラーです。ご存知のように涸沢の標高は2,300mですから下界は猛暑で苦しんでいても、ここから先は別世界です。
重たい足を引きずりながら本日の宿泊となる涸沢小屋へ向けて歩いていきます。何気に小屋の手前の最後の階段がきつかったりします。





13時27分
涸沢小屋到着。
予約を入れる時に混雑が予想されると伝えられたのですが、自分が心配なのは混雑ではなく布団一枚に一人で寝れるかどうかです。実は予約の時に場合によっては布団2枚で3人になるかもしれないと言われていたので、その場合はテントに切り替えるつもりでいました。なので今回はテント装備一式持ってきています。
状況を聞いたところ大丈夫そうなので今日は小屋に宿泊することにします。





14時02分
そして定番の涸沢小屋のテラスでジョッキ生という至福の時間。
今回は発汗量が凄まじいので本当に美味しい! 生ビールってこんなに美味しかったっけ?って改めてびっくりするくらい(言い過ぎか・・・)

こうやってテラスからテントサイトを見てみると、まだまだ残雪が多いのが実感できます。周囲は青々していてまさに初夏真っ盛りですから、緑と白のコントラストという高山ならではの美しさを楽しむことができます。





さて、しばらくすると一時的に雲が抜けて青空が見えるようになりました。この一時的な回復の機会を逃すまいと山小屋では一斉に荷揚げをしていました。荷揚げ用のヘリが忙しく飛び回っていました。何でも7月20日くらいからずっと天候不順が続いているのだとか。悪天候というのはこういうところにも影響が出てくるんですね。





一時的とはいえ穂高の峰に青空が見えたのはよかったです。
しばらくテラスで過ごしていましたがだいぶ体が冷えてきたので夕食まで仮眠を取ることにします。
夕食は2回目があったのでやはり宿泊者は多いものと思われます。前回5月の一人だけの時と比べるとえらく違うものです。
明日の天気も現時点では不透明です。なので明日の気象条件を見て判断することにします。そういえば昨年もそうでした。昨年は出発直前まで雨が降っていましたが、決断ギリギリのところで雨が止んで晴れ間が出てきました。さて今回はどうでしょうか。





06時18分
翌朝は雨。しかも昨年のものとは違い分厚い雲で覆われていてやむ気配なし。回復するとの話もありますが何時頃になるか見通しはついていません。北穂から涸沢岳の稜線を雨の中歩くことだけは何としても避けたいです。無理すれば踏破できなくもないですし、稜線の途中で天候が急変することも視野に入れてはいますが、最初からわかっている場合は計画の変更という柔軟な対応をします。
雨で濡れて滑りやすくなっている岩。ツルツル滑る鎖。滑ったら即滑落のリッジ。あらゆる意味でリスクが高くなっている稜線は避けることにしました。
今回はザイテングラートを登って直接宿泊地の穂高岳山荘へ行くことにします。





06時36分
パノラマコースはまだ雪の下なので基本的には涸沢小屋裏手のコースから登って行く形になります。朝一番ですからゆっくり登っていきます。急いだって穂高岳山荘のチェックインもできないですからスローペースで。でも気づくといつものペースで登っている自分がいたりします。
雨で岩が濡れていますからいつも以上に慎重に進んでいきます。





06時55分
ザイテングラートに向かう途中で雪渓を渡る場所が2箇所あります。アイゼンがなくても問題ありませんし誰もアイゼンを装着していません。転倒しても笑って済ませられます。実際女子らがすっ転んでギャーギャー興奮しておりました。
この時期にザイテングラート経由で稜線に出ることってあまりないので、通常この時期に雪渓を歩いて行くのかどうかわかりませんが、今年はもう涸沢ルート(岳沢ルートも同じ)で奥穂高岳山頂に行く場合はアイゼンは必要ありません。





07時09分
5月にきた時は真っ白だった斜面もすっかり緑で覆われています。霧で覆われた稜線というのもまた神秘的で良いものです。
周囲の稜線は見えませんが、完全にホワイトアウトした前回の下山時と比べれば視界は十分確保できているので問題ありません。登山者も多く常に登山道上に人がいるという状況なのでコースアウトする心配はまずありません。





07時18分
ザイテングラート取り付けの直前にある雪渓です。先ほどの雪渓もそうですが雪が消えるのは時間の問題でしょう。
ここの雪渓もそのまま歩いて行けますし、転んでも「うわ、恥ずかしい」で済むレベルです。ここの雪渓は切ってありますね。歩きやすいです。





07時36分
ザイテングラートの始まりです。
稜線に比べると一歩譲るものはありますが、それでも岩場の連続となり場所によっては3点確保で登っていかなければならない場所もありますのでいつきても慎重になる場所です。ザイテングラートは死亡事故も起きている場所です。
写真の手前で休憩できるスペースがあります。時間調整のために座って休憩していましたが雨の降りかたがどんどん強くなってきたので早くても構わないので先に穂高岳山荘まで登ってしまうことにします。





07時39分
険しい登山道でもちょっと横を見ると高山植物が美しく咲き誇っています。夏山ならではの光景ですね。
涸沢から見上げる穂高の斜面はまるで劇場のスクリーンのようです。春は真っ白な雪景色。時には雪崩が発生して涙のようなデブリが現れたり。夏は燃えるような緑に生命力を感じ、秋には色とりどりの紅葉が登山者の目を楽しませてくれます。まさに涸沢劇場。

さ、そんな夏山の美しさに感動しつつ雨のザイテングラートを昇りつめていきます。





08時02分
ザイテングラート後半部分に突入します。岩登りが続くので慣れないと大変です。
高度も3,000mに近づいていますので息が上がりやすくなっています。自分が無理なく上がれるペースに調整して登っていきます。
春にきた時は雪崩の危険を回避するために12本刃のアイゼンを装備した状態で写真の岩場を登っていき苦労した思いがありますが、今日はそういう意味では楽に登ることができます。
少し弱くなりましたが相変わらず雨が降っていて正直うんざりしてしまいます。





08時36分
穂高岳山荘の直前で再度雪の上を歩きますが、階段状に切ってありますので全く問題ありません。7月初めの頃の写真を見ると残雪が半端ない量で、今年の夏山はアイゼン・ピッケルで行くべきか? なんて思っていましたが、一気に融雪が進んだようですね。季節というのは侮れないです。





08時42分
穂高岳山荘到着。
ゆっくり登ったつもりでしたが結局2時間半といういつものペースで到着してしまいました。周囲は全く視界なし、相変わらず雨が降り続いているような状況でたまらず小屋の中に入っていきます。
チェックインは10時からなのでそれまではビールでも飲んでクダクダ過ごします。

チェックイン後は持ってきたお酒で一杯やりながら小屋の書庫にある本を読んで過ごします。今日の穂高岳山荘は大所帯の団体客が入っていて賑わいを見せていました。

明日の天気予報をチェックすると午前中は晴れになっていて一気にテンション上がりましたが、夕方速報が出てチェックしたら曇り・霧に変わっていて一気にトーンダウン。それでも雨は上がるようなので、何れにしても明日の出発は朝4時にすることにして早めに就寝します。




記事は第2部に続きます。
第2部はこちら





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