夏の穂高連邦縦走(第2部)


縦走最終日の3日目。天候は期待できませんが雨は上がる予報。このため3日目の行程は予定通りにしました。ただし前穂高岳は景色が期待できないことから通過することにします。
まあ、こんな年もあっても良いのかと思いますが正直残念ですね。





04時28分
3時半に起床、出発準備などしているうちに予定時刻の4時になりましたので奥穂高岳に向けて登っていきます。まだ周囲は暗いので手持ちのカメラのオートフォーカスでは画像認識されずシャッターを切ることができません。

穂高岳山荘から奥穂高岳へ向かう場合は山荘を出発して最初の岩場が最大の難所になります。この部分は山荘スタッフの尽力によりだいぶ整備されているので、実際はすごい場所ですが楽に登ることができます。

さて、最初の難所をクリアしてしばらくすると周囲が少しづつ明るくなってきたのでカメラのシャッターが切れるようになります。暗くてわからないですがジャンダルムです。この後霧が出てきてしまいジャンダルムの姿を観れたのはこの時だけでした。





04時33分
一瞬ですが槍ヶ岳まで見えるようになりました。この後はもう雲の中に入ってしまい今回の縦走ではもはやその姿を見ることはできませんでした。
時間からしてもうそろそろ日の出の時間なのでしょうが今日は厚い雲に覆われていてご来光は見れそうにありません。





04時39分
恐らく本日の日の出であろう時間。でもこんな穂高もありかななんて思えます。穂高連邦が大好きなので穂高の全てを受け入れられます。
ここは春に来ると急角度の雪渓を登攀しなければならない難所です。雪が消えたこの時期は難所とまではいかなくてもミスが許されない場所です。特に今日のように条件があまり良くない場合はなおさら慎重になる必要があります。





04時50分
奥穂高岳登頂。
360度何も見えませんが奥穂高岳の山頂に立てたというだけでも満足です。
山頂でドローンを飛ばしている人がいました。これからの時代こういうのも当たり前になって来るのかもしれもしれませんが、静かな山頂を期待していた自分にとってはかなり遠くからも聞こえて来るプロペラ音が不快でした。

山頂に立って耳をすませると聞こえて来る小川のせせらぎや鳥の鳴き声や風の音など、こういう自然の生の音が好きです。下界にいるとこういった「自然の音」というのが全くかき消されてしまいます。いざ3,000m級の山頂に立って耳をすませるとこういう自然の音が本当に美しいのだなということが実感できます。






05時04分
足早に奥穂高岳を出発し吊尾根を歩き始めます。
吊尾根は奥穂高岳から前穂高岳の縦走になり、基本は岩場になりますのでそれなりの技術や経験が必要になります。「上高地に戻るのに涸沢からと岳沢(重太郎新道)とどちらがいいですか」と聞くレベルだったら間違いなく涸沢から戻った方がよいです。
ザイテングラートと比べると格段に難易度が高く岩場を歩く距離も桁違いなのに加えて山麓まで山小屋がありません。
今日は前穂高岳方面は視界があるようで最初の休憩地点である紀美子平付近まで見渡すことができます。ただし奥穂高岳山頂から前穂高岳をみるとすぐに到着できそうに思えるのですが以外に吊尾根というのが距離もあり時間もかかるものです。それを踏まえているので淡々と進んでいきます。





05時13分
南陵の頭(道標あり)をすぎると一気に下りになります。下りというか岩場を直下する形ですね。鎖も数カ所あります。鎖を使うかどうかは登山者の技術で判断するところですが、写真の岩壁部分については途中鎖がなく3点確保で降りなければならない部分があり、いつきても緊張感が走る場所です。
もしかしたらここが吊尾根最大の難所かもしれません。





05時33分
西穂高岳の稜線はガスが抜けてきたようです。西穂の稜線がくっきり見えます。独標、ピラミッド、チャンピオン、第2峰など西穂の名だたる峰々がよく見えています。早く冬になってほしいです(気が早すぎでしょ・・・)。こうやって西穂の稜線を観ていると色々な思えでがよみがえってきます。





05時44分
涸沢を見下ろします。
大部分が雪で覆われていますね。改めて見下ろして観てもわかりますが北アルプス穂高ももう夏山真っ盛りですね。朝6時前の涸沢。今頃朝食を食べている時間でしょうかね。そんな自分の朝食は穂高岳山荘定番の朴葉寿司。これを紀美子平で食べるのが自分の中での儀式??になっています。結構お腹空いてきているのですが紀美子平まで我慢です。






05時44分
反対側の岳沢方面を見ます。ガスが抜けて岳沢が見えるようになっています。ただ青空が見えないのは残念ではありますが。
これもまた穂高が見せる美しさの一面というものでしょう。こういう場面があってこそ青空に映える穂高の峰々が一段と美しく見えるのですから。







06時00分
最低コルまできました。ここから直接前穂高岳に登頂するルートも存在するようですが最近の地図では通行しないように記載されていますし実際一般的な道には思えませんので今回もメインルートを進むことにします。
それにしても直射日光が当たらないと岩って黒いものですね。威圧感さえ感じられます。





06時00分
吊尾根はまだまだ続きます。遠くから見るとあんな崖のどこを歩くんだろうと思われがちですが、実際に来て見ると意外に安全なルートができているものです。
こうやって写真を見ても結構な角度の崖ですが、きちんとした登山道ができているのがわかります。
もちろん場所によっては切り立った崖を上り下りする場所もたくさんあるというのは言うまでもありません。





06時21分
紀美子平到着。
今田重太郎氏がそれまで事故が相次いでいた岳沢から前穂高岳の登山道の整備をする際、この場所にテントを張り娘の紀美子を寝かせて仕事をしていた場所。娘紀美子は25歳で病死しましたが、いつからか誰ともなくこの場所を紀美子平と呼び今に至っています。岳沢〜前穂や奥穂に向かう登山者なら必ず腰を下ろして休憩する紀美子平。由緒ある場所です。

本日穂高岳山荘早立ち組は何人かいましたが、奥穂高岳山頂で自分が先発して以降誰にも抜かされておらず、反対の岳沢から登って来る人ともすれ違っていないので正に紀美子平貸切状態です。そんな静かな紀美子平で朝食を食べます。朝食は穂高岳山荘定番の朴葉寿司です。疲れた体に酢飯がとても美味しいです。腹持ちもよく岳沢小屋に到着してもまだ軽食を食べるほどではありませんでした。

さて、通常ですとザックをデポして前穂高岳に登っていくのですが、今回は天候や視界が悪く前穂高に登頂しても絶景が期待できないことから無理せずにこのまま岳沢に向けて降りていくことにします。






07時05分
重太郎新道と言っても上部は岩場になります。西穂の稜線や上高地から双眼鏡で見てもわかりますが基本的に重太郎新道がある岳沢上部はどの部分も斜度のきつい絶壁になっています。なのでそんな絶壁を一般登山者が上り下りできるように整備した今田重太郎氏は本当にすごい人なんだと実感します。ですから3点確保で降りるような岩場があって当然なわけです。





07時12分
岳沢小屋が見えて来ました。まだまだはるか下の存在ですね。
これからの距離が長いんです。しかもずっと下りなので足もパンパンになってしまいます。要所要所には休憩ポイントもありますので都度効果的に活用します。





07時16分
しばらく降りていくと森林限界を割り込んでいきます。
それでも登山道は引き続き急な岩場を降りていくような場面が続きます。むしろ重太郎新道での事故はここから下で起きていますので気を引き締めます。
森林限界を割り込むとさすがに見晴らしが悪くなります。場所によっては開けるところもありますが基本周囲の景色は期待できません。なので、とにかく安全第一で慎重に降りていきます。





07時33分
カモシカの立場到着。
あまり広くはありませんが周囲が開けている休憩ポイントです。
ここで下から登って来た遭対協の方々とすれ違います。私があまりにも疲れた顔をしていたかもしれませんが「どちらに向かわれるのですか」と声かけてくださいました。岳沢に降りている途中であること話すと安心して「気をつけてくださいね」と言ってくれました。
落ち着いて来たところで出発します。





07時59分
メタルギア梯子※ を降ります。ここを降りれば後もう少しで岳沢小屋に到着です。
朝4時に穂高岳山荘を出発して紀美子平で休憩したきりですので、早く山荘についてゆっくり腰を下ろしたいです。

※メタルギア梯子とは私が勝手につけている名前です。メタルギアソリッド3というゲームでクラスノゴリエ坑道からクラスノゴリエ山麓にかかる延々と続く梯子を彷彿させることからそう呼んでいるだけです。





08時29分
岳沢小屋到着。
ずっと下りの連続だったので疲れました。登山のくだりは普段使わない筋肉を使うようで両足もプルプルきています。
炭酸飲料を一気に飲み干し、椅子に座ってゆっくり休憩します。体が休まったところで上高地に向けて下山していきます。岳沢小屋から上高地までは一般的には1時間半です。この調子なら昼前には上高地に到着できる計算になりますので、ここから先もゆっくり降りていきます。
緩やかな下りを淡々と降りていきますが、横尾から上高地のルートに比べると変化に富んでいてこちらの方がはるかに楽しいです。

最終的に上高地の散策路に合流して登山道が終了したのは10時30分ごろでした。

今回は3日間とも天候に恵まれませんでしたが、それはそれで個性的な穂高連邦の姿を見ることができ一定の評価をしています。さて次に穂高連邦に来るときはどんな姿を見せてくれるでしょうか。今から楽しみです。


お読みいただきありがとうございました。



2017年7月27日〜29日






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