冬の西穂(2016年3月26日)第1部


今シーズン最後の冬の西穂です。冬山の登り納め。
今回はそんな登り納めにふさわしい好天に恵まれました。一部危険な箇所はあったものの稜線の雪の状態もほぼ安定していて今回も西穂高岳山頂まで登れるコンディションでした。

ですが、シーズン最後の冬山はフルパワーで頂上にアタックというより「雪山を楽しむ」をモットーに計画したので、あえてピラミッドピークで引き返してきました。

シーズン最後だからこそ山頂に登頂でしょ、という声も聞こえてきそうですが、また来シーズンも登りたいという気持ちで終えたいので確かに迷いましたが、途中で引き返してきました。

シーズン最後の冬山登山ということで今回はいつもと違って少し詳しく書かせていただきました。





11時05分
ロープウェイの山頂駅に到着しました。
今回は諸事情があってロープウェイに到着するのが遅くなってしまいました。
初日の天候はイマイチです。完全にガスの中に入ってしまい視界がありません。ロープウェイ終点の散策路は踏み固められて凍っている模様で、観光客はツルツル滑って「キャーキャー」言っています。
そんな方々をよそにアイゼン等の準備を整えていきます。今日は確実に稜線の状況は期待できないので、とりあえず山荘まで登ってから今日の行程を考えることにします。





11時17分
昨日はずっと雪が降っていたとのことでしたので、場合によってはラッセルも覚悟していたのですが、その心配は全くなく雪が締まっていてアイゼンも良く効きました。一部緩いところはあったものの雪のコンディションとしてはまずまずといったところでしょうか。

周囲の視界は見えないのですが、時々薄日が差してきたりと厳冬期とはまた違ったコンディションでした。





11時36分
麓の方は木々に付着した雪は溶けてしまい、春の雰囲気を感じさせる姿となっていましたが、ここではまだまだ冬の景色です。世間では桜の開花が伝えられている今日この頃ですが、まるでタイムスリップしたかのような冬の景色に元気付けられます。





11時40分
木々に付着した雪はその時々によって色々な姿になります。
時には写真のような姿になることもあります。こうやって見ると何かのキャラクターのように見えてしまいます。
こういった自然が作る芸術もまた魅力的です。へえ〜、なんて感心することもあるし、思わず吹き出してしまうようなこともあります。冬山ならではの光景ですね。





12時01分
西穂山荘が近くなってくると急登になります。頑張って登っていくと少し開けた場所に出ます。そこまでくれば山荘はもうすぐです。
ここは皆、疲れが出てくる頃なのでペースがゆっくりになる方が多いです。帰りの下山時にすれ違う方々は皆苦しそうな表情をしています。
確かにキツくなる頃ですが、同時にここまでくれば山荘に到着したようなものなので一安心できます。さあ、もう一息です。





12時11分
西穂山荘到着。
まずは受付を済ませます。明日の気象条件を聞きますが天気は良いとのことです。例のごとく軽食を摂り少し休憩します。受付の際は一度稜線に行って戻ってきてから部屋を案内してもらうことにしましたが、休憩しているうちに腰が重くなってしまい、しかも風が出て雪が降ってきたので、今日は稜線に行かず小屋でゆっくりすることにします。

少し仮眠した後、日本酒を飲んでまったりします。
今日はこの時間でも人が多く、グループの方々が賑やかに会話していました。さすがに3月にもなると登山者が増えてくるものですね。

夕食準備のため一旦食堂を退席します。再度仮眠します。数時間程度しか仮眠していないのでいくらでも寝ることができます。時間になったら夕食をいただき、早めに就寝します。


さて、翌朝になります。

この時期の朝食は朝5時です。
もう厳冬期の頃とは違って日の出の時間も早くなっていますので、行動も早い時間に開始できるようになっています。

今日は食後すぐに出発することにし、食後すぐに支度を済ませます。





05時38分
稜線に登る準備を済ませて外に出ます。
予報通り快晴です。今回はご来光を待たずに登山を開始します。この時期の日の出はだいぶ左側から登りますので、山荘前からだとちょうど左手の森林にかかってしまい、純粋なご来光は見れません。

今日は時間も早いこともあり、ご来光は途中の稜線上で見ることにします。今まで西穂の稜線上でご来光を見たのは厳冬期の時期だけでしたので、こんなにも日の出の位置が移動するとは思ってもいませんでした。





05時47分
山荘裏手の丘を登ると独標から先の稜線が見渡せるようになります。
今日はまだ日の出前なので全体的に暗い感じがします。日中の気温がまだまだ高くないためかどうかわかりませんが、早朝であっても凍結していることはなさそうです。
これからの時期、一番心配なのが凍結です。昼間は気温がぐんと上昇し雪が溶けますが夜になると一気に冷えるので氷になってしまいます。

氷になると場所によっては非常に難易度が高くなります。本当に氷になるとアイゼンの刃も効かずにズルッと滑ってしまいます。独標から先の岩峰では致命的な事故につながる可能性が高いです。





05時53分
この時間に日が昇ったと思われます。
この位置からだとちょうど明神岳の影になってしまいますので、ご来光の瞬間を見ることはできませんが、周囲の状況からして日が昇ったんだろうなって予想できます。

この時期で西穂の稜線からご来光を見るには、もっと高い所、例えばピラミッドピーク辺りからでないと地平線から姿を見せる太陽の姿を見ることはできないのかもしれませんね。
それでも当たりが真っ赤になってご来光の典型的な光景に美しさを感じます。





05時56分
焼岳と乗鞍岳が朝日に染まって真っ赤になっています。
冬山のこの時期、この時間でないと見ることができない光景です。美しいですね。
今日は雲海が出ていませんので麓まで見渡すことができます。もちろん雲海が広がっていれば広がっているで幻想的な光景ですので良いわけです。その時々によってですね。





05時56分
笠ヶ岳方面を見てみると、こちらも頂上付近に朝日が当たっています。この時間に笠ヶ岳の稜線を眺めるのは初めてですのでなんだか新鮮な感じがします。

今日の稜線は風が吹いています。とは言っても厳冬期のような暴風ではなく、とてもおとなしい吹き方で、すでに暑くなっている体に心地よいくらいの風当たりです。こう言うところからも徐々に春になっているんだと感じることができます。





05時59分
そうこうしているうちに丸山に到達しました。
まだ朝6時前です。今までで一番早く丸山に到達しました。
この丸山に来るだけでも360度の絶景を楽しむことができます。ここから先は長い登りになりますので体力勝負となります。私も将来、山頂に登る体力がなくなってきても、この丸山までは来たいなと思っております。





05時59分
さて、これから登っていく稜線に目をやります。
見る限りでは問題なさそうです。すでに先行者が何人も登っているのが確認できます。写真ではわかりませんが、すでに独標に登頂している人も確認できました。

そういえば今朝、4時過ぎに出発の準備をしていた人がいましたが、早ければこの時間に独標まで登れるのかもしれませんね。夏季であれば4時台の出発も当たり前ですが、さすがにこの時期は私的には辛いです。まだまだ修行が足りませんね・・・





06時01分
ふと、足元に目をやると登山者のトレースの横に可愛い足跡が。
うさぎですね。この時期の小動物はほとんどお目にかかることができません。冬山では雷鳥に2回、うさぎに1回しか出会っていません。
それでも冬山ならではの特徴として足跡が残りますので、姿は見えなくても、そこにいるんだなということが実感できます。

写真の部分はちょうど吹き溜まりになるような場所と思われ、足を踏み込むとズボッと埋まってしまうような場所でした。なのでたとえ体重の軽いうさぎでもかなりはっきりとした足跡が残っているのが確認できます。





06時03分
そしてついに太陽が顔を出しました。
明神岳より少し左側からの出現です。この瞬間はとても感動的です。やはり陽の光が当たると全てが眠りから覚めたような感じになって良いですね。
場所的には丸山を過ぎて例の広大な稜線を登っている途中です。だいぶ息も上がってきた頃ですが、この瞬間に疲れが吹っ飛んでしまいました。

今まで冬の西穂でのご来光は山荘前から見ていたのですが、稜線上から見るとこんなにも美しいとは思いもよりませんでした。今日は食後少しゆっくりして陽が出てから登ろうかと考えていたのですが、食後すぐに出発して正解でした。





06時32分
丸山上部の広大な稜線を一通り登ると独標やピラミッドピークが一段と近くに感じられるようになります。ここまでくれば独標まであと少しです。
天気が良いと本当に清々しいですね。今シーズンの初めは天候に恵まれず、写真の場所まで来ても先が全く見えないものですから、感覚的にあと少しで独標とわかっていても視覚的には全くそれが感じられないという状況になります。本当に独標直下まで近づいて初めてその姿が見えるという状態でした。
今日はその先のピラミッドピークまでくっきりと見渡せます。





06時41分
冬山は当たり前ですが雪が積もります。なのでアイゼンやピッケルといった冬山登山用の装備をしないと登ることができません。
しかし、雪が積もることによって普段では歩くことのできない場所を歩けるようになるというのも冬山の特徴です。

写真では少しわかりづらいかもしれませんが、独標手前の第12峰の一部が写っています。通常夏季はこの第12峰は巻いていくのですが、この時期は雪が積もっているおかげで峰の上を越えていくことができます。慣れない方はこちらの方が緊張感があるかもしれませんね。





06時48分
その第12峰のてっぺんから独標を眺めます。
すでに3人登頂していて、一人がちょうど取り付いている途中です。
今回の独標の斜面はステップができていて、こんなに簡単に登れてしまうの? と言った拍子抜けしてしまう状態で、下山時に至っては普通に前向きになって降りていける様な状態でした。あえて言わせてもらうと今日のような状況はあくまで条件が良すぎるわけで、これが当たり前だと思われてしまうと次に登った時に死ぬような思いをすることになります。
特に降雪直後なんては雪が崩れてしまい、同じ峰とは思えない難易度になることもあります。





07時00分
西穂高岳独標登頂。
今日も最高な天気です。日もすっかり高くなり峰々が美しく輝いています。

ロープウェイもよく見えています。何度もロープウェイを乗ってきた中で一番観光客の受けがいいのが、山頂駅部分が雲海の上に出ている時です。麓からだと今日は天気が良くないと思ってしまうのですが、山頂駅近くになると雲海から抜け出し、西穂の真っ白な稜線が姿を表すと歓声が上がります。

今日は雲海もないので観光客の方々も景色を楽しめることでしょう。

そして独標の頂上にいる登山者たちもこの素晴らしい景色に心を打たれています、と書きたかったのですが、皆西穂高岳山頂まで行くらしく、当の昔に先に進まれています。





独標から先の峰々です。ど真ん中に大きくそびえるピラミッドピークを筆頭に多くの峰が写っています。奥の方には西穂高岳山頂もバッチリ写っています。
先行者のうちの一人が第9峰に立っているのが見えます。他2人はさらに先に進んでいる模様です。





ジャンダルムから前穂高岳への稜線が見渡せます。
また夏になったらあの稜線(吊尾根)を歩くことになります。今は雪の下で静かに眠っています。春になり上高地が山開きすると岳沢を経由して登る方が多くなります。私は技術的な問題で雪がなくなる7月末まで吊尾根経由の行程は遠慮します。





霞沢岳です。穂高連峰の眺めが圧巻のようです。
徳本峠小屋に宿泊するのが一番理想的なように思えますが、小屋から山頂まで往復で6時間近くかかるようなので(私の場合はさらに遅いでしょうから)、前泊含めて2泊の行程になるのかな、なんて考えたりします。
地図を見るとなかなかの難路のように思えます。


さて、一通り独標頂上からの眺めを満喫したら、先へ進むことにします。

記事は第2部へ続きます。

第2部はこちら






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