秋の西穂2018年10月(第1部)




次々と来る台風の影響で紅葉シーズンの計画がことごとくキャンセルとなってしまった2018年。今度こそはという願いを込めて、普段は積雪期しか登らない西穂高岳の稜線を今回のステージにしました。

今回は2泊3日の行程ですが、2日目の午後からは西穂山荘主催の「ウェザプラⅤ」に参加しました。いわゆる山のお天気教室ですね。このウェザプラⅤに合わせて1日追加で予定を組んだわけです。





09時59分
今回は無雪期ですので鍋平駐車場が利用できます。
鍋平駐車場は新穂高ロープウェイの第二ロープウェイに直接アクセスできる便利な位置にあります。大変広い駐車場で600円、300円、無料の区画に別れおり、ロープウェイ乗り場に近いほど駐車料金が高くなります。登山者は登山者専用区画に止めるように放送されているので、300円か無料のどちらかに止めることになります。さすがに無料区画に止めるとロープウェイ乗り場まで20分近くかかるので、写真の300円区画に止めます。
それでも、ハイシーズンの週末などは無料区画ですら満車で止められない状態のようです。





10時52分
西穂口へ到着、千石園地に向かいます。

当たり前ですが、「雪がない」

あの肌を刺すような冷たく新鮮な空気はまだまだのようです。
今日は天気予報では回復する予報になっていますので、今は曇りや霧の状態でも問題ありません。アイゼンやゲイター、ポールなどの準備をしなくても良いので楽です。ロープウェイ降りてからそのまま登山道に行くことができます。





10時58分
厳冬期には雪で屋根が埋まってしまうこの小屋も今は全部見えています。登山届出所のようです。いつものようにロープウェイ乗場で届出を書いてきているので今日は素通りします。

今シーズンも徐々に増えて行く積雪量を目で比較できるようにこの小屋を積雪量の目安に利用させてもらうでしょう。





11時24分
雪のない登山道です。特に何か変わったことはない一般的な登山道ですが、普段はアイゼンを装着して雪の上を歩いて登っていくので何となく違和感を感じます。
今日は先ほどまで雨が降っていたので岩や木の根が濡れていて、気を付けないとスリップしてしまいそうになります。とりわけ木の根については多くの方が痛感されている通り非常に滑りやすいです。なので積雪期よりも神経を使ってしまいます。





11時43分
この辺りまで来ると斜度が大きくなるので、積雪期はしっかりと雪面にけり込んでいかなければならない場所です。そういう意味ではこの部分に限っては雪がないこの時期のほうが登りやすいかもしれません。ただし下山時はやっぱり雪があったほうが楽です。
以前、ここは斜めに傾いた倒木のなごりがあり、マーキングポイントになっていたのですが、いつからか除去されてスッキリしています。自分にとっては思い出の場所なんですが・・・





11時57分
西穂山荘到着。
こうして見ると、冬季はいかに積雪が多いかがわかります。写真のテーブルが出ているテラスの部分はほぼ雪で埋まってしまいますからね。小屋が雪で埋まってしまわないように除雪作業をするというのもよくわかります。
よく見ると来るべき積雪に備え鉄骨が組まれています。もう冬はそこまで来ています。

さて、山荘の中に入っていきます。「あれ〜、まだ雪降ってないですよ〜」なんて冗談を交えながら受付します。やっぱり西穂山荘の暖かな雰囲気がいいですね。ちょうど忙しい時間でしたので簡単にお話ししたあと、定番の西穂ラーメンを注文します。深夜2時に高速道路のサービスエリアで丼を食べた後は一切食事していなかったのでお腹が空いていたのですが西穂ラーメンのために我慢しました。やっぱり美味しいです。見ているとラーメンは飛ぶように売れていきます。

お腹が満たされたら、案内された部屋で着替えや荷物の整理などして、再びレストハウスへ降りていき、毎度毎度の日本酒タイムを始めます。今日は雪見酒ではありませんが晩秋の雰囲気漂う中、酒が進みます。





16時03分
酒を飲んでいると「霞沢岳が見えてきたぞ」という会話が聞こえてきたので外に出てみます。先ほどまで霧で真っ白だったのが、いつの間にか霧が抜けて視界がひらけてきていました。実際に想定より回復が遅かったのか、山の局地的な気象まで読み込めなかったのかはわかりませんがこの時間になってようやく天気が回復してきました。

そしてしばらく様子を見ていましたが、みるみる雲が抜けて、夕日が期待できる状況になってきたので、すかさず支度をして稜線に上がっていきます。





16時55分
山荘裏手の小高い丘を上がり振り返ります。
滝雲が夕日に照らされています。少し前まではどうして稜線を超えると雲がなくなってしまうのだろうと疑問に思っていましたが、今はその原因ははっきりわかっています。そう、無くなるわけではないんですよね。「見えなくなる」と言った方がわかりやすいでしょうか・・・
まさに、この滝雲については翌日からのウェザプラⅤで取り上げられていました。





16時55分
稜線を見上げます。
夕日で赤く燃え上がっています。ハイマツがなければ「これは火星の写真です」と言っても分からないくらいです。・・・言い過ぎか。。

冬の稜線ももちろんいいですが晩秋の夕暮れもいいものです。 この寂しさがまたいいんですよね。





そしてついにその時がやってきました。
西穂高岳稜線からみる夕日です。麓は見事な雲海になっています。こんなに美しい雲海は滅多に見られる機会がないと思います。





ふと横を見ると霞沢岳の稜線が秋の夕日に照らされています。
「秋の夕日〜に〜🎵」自然と歌詞が脳裏に浮かんで・・・きたわけではありませんが歌にもなるくらいこの時期の夕日に照らされた山は美しいのだというのがわかります。





どんどん日が落ちていきます。
いや〜、この絵は麓では絶対に撮れませんね。





この時期の夕日はちょうど白山に沈んで行くようです。

さて、あまりゆっくりしていると夕食の時間になってしまうし、足元が暗くなるので、ぼちぼち小屋に戻ることにします。

今回は食事も部屋も本館でしたのでやはり宿泊者は多いようです。食事の前には山荘の常務であり気象予報士でもある粟澤常務から明日の天気についてお話があります。普通はお金を払ってピンポイントの天気を予報してもらいます。例えばエベレストの遠征隊にもなるとかなりの高額な手数料を払って期間中の詳細な天気を予報してもらうようです。
粟澤常務から非常に価値の高い予報をしていただき、結果として明日は出発を少し遅らせ気味にして独標を往復することにします。

食後も常務と色々お話をしたり、偶然放送されていたNHKの北アルプスの番組を見たりして楽しいひと時を過ごします。





07時26分
二日目です。
朝食の際、常務より昨日からの天候の変更点など話があります。少し天気の話になりますが、天気を予報する場合は少しでも直近の資料を使う必要があります。今回のように予測が難しい状況の時はなおさらです。数時間前の予報とはまるで変わってしまう場合もあります。
最新のデーターから解析した本日の気象状況を発表していただき、行程に大きな修正はないものの若干早めに行動することにします。

さて、本日の目的地は独標(結局ピラミッドピークに変えましたが)です。今回の主要な目的はもちろん登山ですが、それ以上に「地形を把握する」という目的があります。本来の地形に対してどのように雪が着いているのかを把握したいと思ったわけです。

天気も上々。早速稜線に向けて登り始めます。





07時34分
厳冬期にもなると急な雪の斜面になり、降雪直後の場合は首まで沈み込むラッセルになる山荘裏手の部分は、大きな岩を乗り越えて行くような形になります。
朝一番ですし、意図的にゆっくりと登っていきます。
一通り登ると稜線上の峰々が見えてきます。いつもながら感激する瞬間です。





07時38分
霜柱が立っています。
昨晩は0度以下になったようです。
山荘でも凍結の可能性があるので水道管の水抜きをしていたくらいです。こうやって冬になって行くのでしょうね。
岩場は霜が降りているようです。本日の出発をあえて遅くしたのはこのためです。霜によるリスクを軽減するためです。自分が一番怖く感じるのは足元が安定しないときです。特に独標から先の岩峰帯では岩が濡れていたり凍結していたり雪が軽く乗っていたりするのが一番恐怖を感じます。





07時44分
丸山到着。
秋晴れの下、笠ヶ岳の稜線が綺麗に見えています。
普段、この丸山近辺は風の通り道のようで強風に煽られることが多いのですが、今日は西穂高岳の稜線はほぼ無風の状態でした。





7時44分
さて、ここからは長い登りになります。
ハイマツで覆われた山肌にくっきりと登山道が見えています。厳冬期にもなると斜面全体が雪で覆われて道なき道を上っていくのですが今は遠くから見てもはっきりわかるガレ場の道があります。
目を上げると右には独標、左にはピラミッドピークや第7峰が見えています。いつもの景色ですが雪がないだけでもだいぶ雰囲気が違うものです。





7時51分
そして独標に向けて登り始めます。
基本ガレ場ですが、意外に安定していて、ガレ場の歩き方の基本を押さえていれば問題なく上り下りできます。まあ、積雪期のアイゼンの安定性を知っている者にとっては歩きにくいなと思うところですが 、ここは自分が予想していたよりも歩きやすかったです。
この登りが終わると稜線の姿は一気に岩峰に変化します。

風はほぼ無風、気温も少しづつ暖かくなってきており最適な状態です。ただ紅葉シーズンが終わり冬を待つばかりとなった稜線は独特の寂しさがあり、またこれがいいんですね。さあ、頑張って登りましょう。



記事は第2部へ続きます。

第2部はこちら







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