秋の西穂2018年10月(第2部)


08時01分
丸山を過ぎ広大な斜面を登り始めたところで振り返ります。
遥か遠方には乗鞍岳が、写真中央には焼岳が見えています。秋で日が低くなっていて夏とはまた違う景色にも見えます。
空は快晴とはいかず全体が白っぽくなっていますので水蒸気が多いものと思われます。





08時11分
登山道が整備されています。
この辺りは風の通り道なのか厳冬期でもなかなか積雪が多くならない部分で、角材がむき出しになっていてアイゼンで痛めないように注意を払う部分です。
まあ、この辺は想定通りの登山道の様子ですね。





08時17分
写真中央に柵が立てられているのがわかるでしょうか。この柵は記憶にないので無雪期にのみ設置されているのかと思ったのですが、後日聞いたところでは、この柵の先のお花畑に撮影のため立ち入る人が多く被害が出始めているので止むを得ず設置したそうです。
登山者の良識を願うばかりです。





08時36分
独標直下まで来ました。
最初の取り付きが左へ大きく巻き気味になること以外は積雪期のルート取りとほぼ同じです。アイゼンやピッケルのないこの時期の方が遥かに楽に上り下りできます。岩も凍結や積雪がないのでホールドできる部分が多く安定して三点確保で登って行くことができます。
ここから先は頂上までこんな感じの岩峰になります。なので穂高と名がつく峰の中で一番難易度が高いのは西穂高岳なのではないかと思っています。





08時47分
西穂高岳独標登頂。
笠ヶ岳がよく見えています。
何名かの登山者と話しましたが皆頂上まで行くようです。頼まれて写真を撮ったりしましたが皆美しい笑顔です。それもそのはずこんな素晴らしいコンディションなのですから。





08時50分
独標から先の稜線を見上げます。
中央の台形に連なっているのがジャンダルム。そこから右に吊尾根が続き前穂高岳。写真では判別しにくいですがジャンダルムの右奥に小さく尖っているように見えるのが奥穂高岳。
こうやって見ると穂高の峰々は本当に岩峰なんだと実感しますね。





08時53分
独標を出発します。写真は独標を頂上側に下りた部分から振り返って撮った写真です。こちら側(山頂側)は何年か前に整備されて以来非常に楽に上り下りできるようになりました。積雪期とほとんど同じルートです。ただ雪がない分この時期の方がはるかに楽です。





08時55分
次の第10峰に向けて登り返していきます。
ああ、雪がないと何て楽なのでしょう。個人的な意見ですがイメージとしては北穂〜涸沢岳の稜線に近いものがあるかもしれません。
毎度書いていることですが、独標から第9峰の間は難易度が高い部分です。もちろん第7峰や主峰直下など難所は他にもありますがこの区間は万が一滑落したときに場所によっては命に関わる場所です。





08時57分
第10峰登頂。
10峰は休憩するような場所ではないのですぐに先に行きます。10峰から山頂側に降りる部分は冬期はホールドできる部分が少なくアイゼンが刺さらない場合は苦労する部分です。この時期はホールできる岩が多く足元も靴のソールで安定していますので角度のある岩場を安心して下りていけます。





08時59分
第10峰を降りた先に待っているのは危険なやせ尾根です。尾根の左側(飛騨側)は見るだけでも震えるような崖になっているのがわかると思います。さて右側(信州側)はどうでしょうか。
ハイマツがあるので分かりづらいですが実は右の飛騨側よりも絶壁になっています。もしハイマツを切ってしまったら両側が切り落ちている恐怖感たっぷりの痩せ尾根になります。ここは冬期は雪庇が張り出す部分で、夏・冬とも滑落事故が起こりやすい場所ですし実際に起きているとの情報も多数あります。
ここは尾根の中心をバランスよく歩いて行きます。滑落すること自体あってはいけませんが万が一落ちた場合、飛騨側の方がまだ生存率は高いと言われています。





09時01分
第9峰です。
完全に岩峰です。心配されていた霜は跡形もなく消えています。ここで霜が降りていて滑るようだとかなり難易度が跳ね上がります。
さて、第9峰まで来ました。この第9峰の先のちょっとした岩場のトラバースを超えると第一の難所はクリアです。難所以外は大丈夫かというとそうではなく、西穂高岳の稜線は独標手前の小峰である第12峰から主峰の間は行きも帰りも絶対に気を抜いてはいけない所です。一息ついていいのは第12峰まで戻って来たときです。





09時09分
第8峰ピラミッドピークに向けて登って行きます。
写真は冬期には雪壁となる難所です。積雪直後にはラッセルとなり相当体力を削られます。
雪のない今回は角度のある岩登りになります。距離が短いしマーキングもされているので難なくクリアできます。帰りも前向きに降りてこられるほどです。





09時13分
ピラミッドピーク直下です。
斜度が大きいのでスピードが落ちます。

っていうか、独標まで登ったらゆっくり降りて行くつもりだったのが、気づいたらピラミッドピーク直下にいました。





09時20分
ピラミッドピーク登頂
ここまで来て初めて見えてくる峰の後半部分。
さて、今回はここで引き返すことにしました。常務の予報通り雲が現れ始めていました。そしてこれが思ったより早く広がって行き、独標に戻った頃はピラミッドピークから上は完全に雲の中に入ってしまいました。明らかに上昇気流による局地的な積雲の発生です。





残念賞の西穂高岳山頂の眺めです。この時期の頂上直下はルンゼでなく左側の岩場を巻いて行くんですね。ふむふむ参考になります。

さて、山荘へ降りて行く事にします。
この後は今回のもう一つの目的であるウェザプラⅤの参加です。





さてウェザプラの始まりです。
ウェザプラとは「Weather Forecast Practice」の略で天気予報の実習の事です。気象の勉強をしている人なら「十種雲形」については知っていることと思います。雲の性格や出現する高度などから雲を10種類に分けています。
気象に限らず知識として持っているだけと実務で使っているのは全く異なります。ウェザプラでは座学の後、実際に稜線に出てみて雲を分析するという実務作業をします。大変勉強になります。とりわけ層状の雲と危険な積雲の見分け方に至っては偶然にも両方の雲が出ていましたので比較しながら学ぶことができました。
天気だけでなく山での遭難防止について、航空隊員からの話も含めて貴重な話を聞くことができました。





稜線では雲の観察だけでなく、立っているときと座ったときでは風の当たり方が全然違うことなども体感できました。また、場所を少し変えただけでも風の通り道になったり、風の通り道から外れたりするので、ビパークするときはなるべく風のない場所を探す事も重要だということも学びました。
実際に風速を測定し、風速約10m/sでしたので、10m/sだとこれくらいだというのを体で覚えておくと良いとのアドバイスもありました。風速10m/sは体感温度で気温マイナス10度です。





ツェルトがどれだけビパークに有効かも体験していました。





翌日は本日の気象の解説の後、丸山まで登り観天望気の解説。その後希望者は皆で独標に登ります。上り下りの途中も登山道の説明や裏話??なども交えながら楽しい行程になりました。


なかなかこういう機会はないので今後も積極的に参加したいと思います。


定例の「秋の涸沢・穂高」が台風で台無しになった分、今回は非常に充実した三日間でした。
さて、冬は確実にすぐそこまで来ています。この記事を書いているときも富士山が冠雪したとの情報が入って来ました。今年はどんな雪の着き方をするのでしょうか? 楽しみです。



2018年10月12日〜14日







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