北穂高岳2011年9月(第2部)


初めての穂高。
雲ひとつない青空の中、涸沢から見上げる北穂高岳の稜線は圧倒的存在感があります。これまで登ったどんな山よりも困難な道のりでしょう、これまでに登ったどんな山よりも素晴らしい山頂を見せてくれることでしょう。
何もかもが最高の条件です。栄光ある穂高の頂上に向けて一歩づつ登って行きます。





07時25分
北穂高岳の登り口は涸沢小屋のヘリポート横にあります。行けばすぐにわかります。
昨日、テントから見上げていると北穂高岳から降りてくる人が確認できたので「ああ、あそこを登っていくんだな」と何となくコースのイメージがついています。





07時29分
北穂高岳への登山道はいきなり直登から始まります。大きな石が几帳面に階段状に積み重なっていて、写真で見る以上にスムーズに登って行けます。
ですが、朝一番でいきなりの直登ですから徐々にペースが落ちてきます。「これが穂高なんだ」といきなりの穂高の試練に手こずります。
ま、荷物だけは最低限のものしか入れていないので軽くなっていて助かります。





07時44分
少し登っただけなのに振り返ると、昨日広大な場所だと感動した涸沢があんなに小さくなってしまいました。もはや自分のテントがどれかも判別が難しくなっています。こうやって見ると涸沢というのはすごいところにあるんだなって実感します。先週、蝶ヶ岳から見た穂高連邦の雄大な姿はダテじゃないです。






08時16分
登山道を登っていくと崖で行き止まりになりました。
あれ?道を間違えちゃったかな? いや、確実に正しいルートを来ています。その証拠に今通って来たところには丸印がついています。
で、この崖をよく見て見ると・・・ 何ということでしょう!崖の途中に丸印がついているではありませんか! 
「まさか・・・ この崖を登るのか〜!!」
いきなりのビックリゾーン出現!
さすが名だたる穂高の名峰!
興奮が落ち着いていざ崖を登り始めると意外に登れるものですね。むしろ楽しいです。





08時29分
ガレ場です。こんな大きな岩を乗り越えて登っていくなんて経験したことがないので大変興味深いのですが疲れます。よく見ると登山者が歩いた跡がわかります。もちろん平らな岩だけでなく岩の角にバランス取りながら足を置いて行かなければなりません。
意外に難しいです。岩の上には丸印が書いてありますので道に迷うことはありません。こういった目印がなければ初めての登山者には困難な道のりになってしまうでしょう。





08時40分
少し緩やかになりました。余裕が出て来たのか周囲の景色がとても美しく見えます。空の青が濃いです。こんな濃い青は初めて見ます。標高が高いからでしょうか。
草はすでに枯れていますが木々はこれから紅葉でしょうか。周囲は完全に岩です。これが穂高なんですね。





08時48分
ええ〜、ウソでしょ??
思わず叫んでしまいました。これクライミングじゃないですか!!
これ登れるの?
さすがは穂高の登山道。もう非現実的です。こんなの映画や漫画の中でしか見たことないぞ!クサリが付いているので何とか登れそうです。
クサリの登り方を思い出します。「両手でクサリを持つと不安定になり左右に振られるので、必ず片方の手はクサリ、反対の手は岩をホールドして安定した状態で3点確保で上り下りすること」
いざ登ると意外に足や手を掛けられる場所があり落ち着いて登れば想像以上に難なくクリアできました。






08時57分
この岩場の直登を終えるとちょっとしたハシゴがありこれを登り終えると涸沢岳が間近に迫って来ます。
先週遠巻きに見た穂高連邦も近くから見るとまるで違った様子を捉えることができます。岩の要塞といった感じです。しかも3000mの天空の領域。圧倒されてしまいます。





09時25分
さて、北穂高岳の登山道は先ほどの岩場の直登を登りきると様子が一変します。
完全に岩を登っていく形になります。3点確保は登山の基本として学んでいましたが、実際はこういうことなんだなと体で覚えて行きます。
いや、今まで本当に3点確保が必要な場所に遭遇したことがなかったものですから。
もしかして、何だか凄いところに来てしまったのかもしれません。





09時50分
何だか凄くとんがった尾根が見えて来ました。あれは人が通れるのでしょうか。
よく見ると豆粒のように小さな登山者が何人か動いているのが確認できました。そうか、これが北穂高岳から涸沢岳に繋がっている超難度の稜線なんですね。いや〜、見ただけで身震いしてしまいます。
穂高連邦ってすごいですね!





09時54分
突然ひらけた場所に出ました。岩に番号が書いてあります。テントが張られています。
そうか! ここが北穂高岳のテント場ですね!
ということは、テント場から北穂高小屋(頂上)まで20分ですから、あともう少しだということです。
さて、写真を見てお気づきかと思いますが、岐阜県側から雲が出てきていました。これが気づいたら、あっという間に覆い尽くしています。一体どうなってしまうのでしょう。





10時12分
北穂分岐に到着。
北穂高岳方面に向かいます。ここから奥穂高岳方面に向かうと、先ほどの超難度の稜線を通っていくわけですね。
下山する時、異様にテンションが高いお姉さんのグループがこの分岐を見逃して涸沢方面に行こうとしていました。迷っていたので「分岐通り越しちゃってますよ」と教えて差し上げます。どこまで行くのか聞くと「奥穂〜〜♡」と元気よく分岐から奥穂めがけて歩いて行きました。
さて、北穂高岳まであと200mです。





10時18分
頂上の一歩手前で涸沢が見える場所があります。もう、テントも判別できません。涸沢ヒュッテの赤い屋根だけがはっきりと存在感を出しています。

さて、このすぐあとガスが出てきてしまいました。そして何とパラパラっと降ってきたのです。お兄さんたちが下山してきました。「降ってきましたね!」と会話します。「あとちょっとですよ」と励ましてもらいます。
雨具を着たのですが、雨はすぐに止んでしまいました。

さあ、頂上までもう少し!





10時24分
北穂高岳登頂。
初の3000m超です。そして初穂高。
そしてああ、何ていうことでしょう!目前に見える景色はもはや現実離れしています。これはこの世の景色か? 来てはいけないところに来てしまったのではないだろうか?
今までの苦労が一気に吹き飛んでしまいました。しばらく頂上で天空の世界を感じ取ります。まさに天空の頂きです。






槍ヶ岳からずっと続く稜線。そして北穂高岳にかけて急激にえぐれている登山道、これはもしやあの有名な大キレットではないですか! これは本当に人が歩けるのだろうか? すごいです。
スケールが大きいですね。何もかも圧倒されてしまいます。





10時36分
山頂のすぐ下には北穂高小屋があります。富士山は別にして日本で一番高いところにある山小屋です。
こんなところに山小屋があるなんて本当にすごいですね。穂高デビューの登山者にとってはありがたい存在です。





10時39分
有名な北穂高小屋のテラスです。今日は槍ヶ岳がよく見えています。日本一高い場所にあるテラスでカレーと食後にコーヒーを頂きます。
売店で記念品を買います。
一通り休憩できたら、今度は涸沢のベースキャンプへ下山です。



下山の方が緊張感があります。登るときは青空が広がっていましたが、すでに雲で覆われていて、あの青空はどこかへ行ってしまいました。

やはり一番緊張するのはクサリが張られた岩場の下降です。ここを過ぎると後は足がすくむような危険な場所はなかったように思います。最後は疲れてしまい、ゆっくりゆっくり降りて行きます。涸沢は見えているのですがなかなかたどり着きません。





13時02分
やっとの思いで涸沢まで下山しました。
涸沢小屋で登頂祝いをします。写真撮る前にビールをカーッとやってしまいました。ま、いいか。
北穂高岳往復は約6時間かかりました。休憩とか入れたのでロスタイムを差し引けば5時間ぐらいなのかもしれません。
今はやっと涸沢に降りたという安堵で一杯で、穂高デビューを果たしたという実感がまだ湧いて来ません。それだけ大変な行程だったということでもあります。





17時11分
テントに戻りしばらく仮眠します。
一眠りして外に出るとちょうど夕日と雲がコラボレーションしていて、まるで穂高岳山荘が火事になったかのような光景になっています。
明日は月曜日だからだと思いますがテントの数が大幅に減っていて寂しいくらいでした。

テントの中でシェラフに包まれながら、改めて「登ったんだな」と実感します。
先週は蝶ヶ岳から眺めていた穂高連邦。今日は北穂高岳に登ったんです。自分の登山もついにここまで来たんですね。一体どこまで行ってしまうんだろう。






07時05分
翌朝です。
食事を終えて、テントを撤収します。
たったの2泊ですが、何だか随分長い間ここにいたような気がして、撤収するのが寂しく感じます。3日間山にいるというのは初めての体験ですが自然と一体になれた感じがして最高でした。






07時13分
そうこうしているうちに、全てをザックの中に納めました。
58リッターのザックは限界まで詰まっています。さあ、上高地まで戻ることにします。まずは横尾ですね。





07時21分
最後にもう一度北穂高岳、そして涸沢の光景を目に焼き付けておきます。
気持ち涸沢の木々が色づき始めているでしょうか。10月に入る頃には紅葉が見頃を迎えるかもしれません。

初めての穂高。たくさんの思い出ができました。

思い出を旨に下山して行きます。

ゆっくり、ゆっくり。



2017年11月24日〜26日



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