冬の西穂(2017年11月22日)


さあ、ついに冬山シーズンの幕開けです。
シーズン初の冬の西穂高岳は天候に恵まれませんでしたが、雪の量には恵まれ過ぎて下山時は11月なのに膝までのラッセルをすることになりました。
記憶が正しければ2012年の11月も結構積雪があったように記憶していますが、今回はそれをはるかに凌ぐ積雪量でした。





11時09分
ロープウェイ終点となる西穂高口駅に広がる千石園地はすでに完全な冬山状態。一目で11月にしては雪の量が多いというのがわかります。3月ごろにもなれば写真の場所は人の背丈より高く積もるのですが、それでもこの時期にしては積雪が多いです。

観光客の方が心配して声をかけて来てくださいます。我々登山者は「よし!これから登るぞ!!」と意気込んでいるわけですが、観光客の方は標高2,156mの雪の世界で寒そうにしています。もちろん装備しているものも違うのですが、こんな極寒の中を登っていくということがびっくりなのかもしれませんね。

一通り準備ができたら出発することにします。





11時14分
登山道が始まる所に建っている小屋。
3月頃にもなると屋根と雪面が同じくらいの高さになります。つまりそれだけ積雪するということなんです。こういうのを見ると「ああ、まだ11月なんだな」って感じます。

ロープウェイから西穂山荘、そして頂上までの全てに言えることですが、夏道と冬道に分かれている部分が多数あります。山荘まではスタッフの方が雪の状況等で判断して都度ルート設定をしてくださいます。山荘から先、とりわけ独標から先は登山者自身がどちらを辿ったら良いか判断しなければなりません。

今日は流石に山荘までのルートは夏道でした。





11時17分
さて、本日の登山道の状況ですが、アイゼンを履いた状態でほぼ雪の上を歩けます。ただし場所によってはアイゼンの刃が下の岩まで届いてしまう場所もありました。それでも翌日の下山時はアイゼンの刃が雪の下に届くようなことはありませんでした。
直近の気象情報をチェックしている中で、もう少しパウダー気味かと予想していたのですが想像以上に湿雪で降ったばかりにしては歩きやすかったです。





11時34分
積雪直後は木の枝に雪が積もっていますので注意しないと自分の上に雪がドサドサって落ちて来ます。ザックに木の枝が引っかかりその拍子に首筋に大量の雪が襲いかかる始末。一部は背中の中に入っていき悲しい状態になってしまいました。
夏なら良いのですが(って夏は雪なんて無いだろ〜)この時期首筋や背中に雪が入るとタチが悪いです。よく注意した方が良いですね。





11時39分
さて、西穂高岳の稜線はこの時点では雲に覆われています。もともと天気が期待できないのは覚悟していましたので「ああ、やっぱりね」という感じで済んでしまいます。これからの時期、計画していた日が好天になるかどうかは、はっきり言って運です。3月にもなれば比較的安定した日が多くなりますが、これからの厳冬期は晴れる日が少ないです。






12時11分
山荘への最後の急斜面です。まだまだ雪は少なく、ルートも夏道なので直登でなく迂回していく形になっています。
この部分は一気に直登していくという記憶が残っていたので、実際に迂回しながら登ってみて「ああ、そうだったな」と思い出します。
笹の葉が出ているあたり、まだ積雪期に入ったばかりだと感じさせるものがあります。





12時27分
西穂山荘到着。
山荘もすっかり冬支度を終えて厳冬期に備えています。
北アルプスで唯一通年営業している山小屋。だからこそ私のような者も雪山に挑戦することができるわけです。そうでなければ日帰りで挑戦するか、テント張るしか無いわけです。どちらも大変ですね。ま、日帰りの方がまだまだ現実的でしょうか。それでもロープウェイの時間を気にしながら登り降りしなければならないので落ち着かないですね。

山荘のスタッフの方々に今シーズンもお世話になりますと挨拶して、定番の西穂ラーメンと「氷結」という字が書いてある飲み物を飲みます。やっぱり西穂ラーメン美味しいです。

さて、気象条件ですが、今晩は荒れることはわかっています。明日は回復傾向にあるようですが、朝の段階では西穂高岳の稜線は荒天になる可能性が大なので、今日のうちに行けるところまで登ってしまうことにします。スタッフに情報を聞くと、独標まで行こうとしたがラッセル等のため途中で断念したとのこと。なので、少なくとも裏手の丘を登って峰々が見えるところまでいけたらいいかなと思い出発します。





13時09分
山荘裏手の写真の部分は降雪直後は吹き溜まりとなり、胸ぐらいまでのラッセルになります。ごく短い距離ですが運悪く先頭になってしまった場合はこの部分で相当体力を削られます。
幸い今回はトレースがついていたし、想像以上に雪が締まっていたので難なく登っていくことができました。





13時12分
山荘から上は森林限界を超えますので今まで登ってきた樹林帯のように風を遮るものがなく直接吹き付けてきます。今日は全般的に穏やかで、丸山付近ではほぼ無風でした。まあ、タイミングもあったのかもしれませんね。
今日のような天候の時に雷鳥がよく出てくるのですが今日は見かけることはできませんでした。天候に恵まれなくてもこういう楽しみもあるんですね。





13時15分
山荘裏手を一通り登り終えて振り返ると焼岳や乗鞍岳そして閉山して静まり返った上高地を見渡すことができます。
今日は厳冬期特有の鉛色の空。それでも視界はあるので乗鞍岳程度の距離であればくっきりと見えています。





13時19分
稜線の状況ですが、この部分はまだトレースをなぞっていけば普通に歩くことができました。なので丸山まで行くことにします。ただし、少しでもルートを外れると途端に膝あたりまで持ってかれるので、まだ安定していないというのが良くわかります。
昨年この部分はアイゼンをガリガリさせながら登りましたが今日はアイゼンの刃が岩まで到達することはありません。





13時23分
丸山に近くにつれ、雪の深さが増してきます。トレースがあるのが救いです。山荘スタッフと登山者2名がトレースをつけてくれたようですが、トレースをたどるだけでも大変です。昨年の12月前半に登った時を思い出します。あの時はトレースがない状態で3人で独標まで登りました。今日はソロでシーズン初ということもあって無理はしないことにします。





13時28分
丸山登頂。
周囲の山々があまりにも凄いので、それに慣れてしまうと「登頂」っていう感覚がいまいちないのですが、それでも山であり山頂であります。残念ながら笠ヶ岳は雲の中のようです。

さて、少し先まで歩いてみましたがあまりにも雪が深いので、やはり今回は丸山で引き返すことにします。というか実は最初から丸山から先に行くつもりはなかったので、独標まで登れる装備は山荘に置いてきています。あらら〜





稜線を見上げます。一番右の台形の峰が独標。一番背の高いとんがったのがピラミッドピーク。その左隣が第7峰。第7峰の左は名の無い峰でよく下山時に間違って登り返してしまう場所です。
今日は本当に厳冬期の西穂らしい姿になっています。





霞沢岳に微妙に雲がかかっています。





独標の手前、写真でいう一番右側の部分ですが、雪庇が出始めています。ホワイトアウトやそれに近くなると雪庇が判別しずらくなりますので注意が必要です。





ピラミッドピーク下部の雪壁部分は最高に大変そうです。その奥の第7峰に至っては見ただけでも鼻血が出そうなほど危険な状態です。





さて、冬の西穂稜線を眺めているうちにピラミッドピーク付近は雲に覆われてきましたので、山荘に戻ることにします。

もしかして・・・とは思っていたのですが、やはり今日の宿泊者は自分のみ。さあ、これで山小屋貸切状態は3軒目。涸沢小屋、穂高岳山荘、西穂山荘。いずれも知名度の高い大型の山小屋な訳で。これぞ究極の「お一人様」 こういうのも中々経験できないですから貴重な機会です。

あとは日本酒飲みながら雪景色を楽しみます。気がついたら寝てしまい夕食の準備がそろそろ終えようとしていました。自分一人のために豪勢な夕食を出しくてくださりなんだか恐縮なのですが、感謝していただきます。
食後もチビチビ飲みながら過ごし、消灯時間が近づいたので就寝します。





翌日は想定していたよりは落ち着いた感じがありましたが、稜線には出ずに下山のみにします。昨晩は吹雪(麓は雨だったようですが)で、新たに積もった雪により下山は完全にラッセル状態になりました。それでもルートの部分は周囲に比べて若干低くなっているのと、目印の旗が立てられているので、コースアウトの心配はありません。

11月でありながら平均して膝までのラッセルをしながら降りて行きます。
ロープウェイ付近の登り返すあたりまで降りてきた時に、登って行く登山者数名とすれ違います。目が合った瞬間にすごく嬉しそうな顔に変わっていました。それもそのはず、ラッセルしなくて済むわけですから。
自分が降りてくるとき、なるべく小股で雪を踏み固めてきましたので、微力ながらお力になれたかも知れません。

ロープウェイ近くまで降りてきた時、自分の着ているシェルジャケットの表面が濡れているのに気づきます。気温が高いということです。厳冬期であればそもそも雪が解けることはないのでジャケットが濡れるなんてことはありません。これを考えるとまだまだ11月なんだと実感します。


さて、シーズン初の雪山を終え、いよいよ本格的な冬山になります。

今シーズンはどんなドラマが待っていることでしょう。


楽しみです。




2017年11月22日



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