秋の穂高・涸沢2016(第2部)


涸沢の紅葉を存分に味わった後は、本来の目的である登山を再開します。
当初の目的は稜線の穂高岳山荘に上がるだけ。どちらかというと2日目はゆっくり、のんびりできる行程なのですが、今回は天候の関係で大幅に行程の修正を迫られることになりました。登山に無理は禁物。時にはこういった判断も必要になります。






09時50分
今回、稜線に上がるのに使ったのは普段のパノラマコースではなく、涸沢小屋裏手から登っていくコースです。
どちらかというとこちらのコースの方が直登に近いので時間的にはこちらの方が有利かもしれませんが、パノラマコースと比べると視界があまり良くありません。なので、景色を楽しみながらのんびり登りたいならパノラマコースが良いかもしれませんし、少しでも時間を稼ぎたいのならこちらのコースが良いと思います。





10時02分
今年は「赤」が少ないように感じます。
もう少し赤が入ると綺麗だと思うのですがこれはその年々で差が出るのでしょうか。まあ、それはそれで毎年「今年の紅葉はどうかな?」って期待できるので良いと思います。





10時04分
岩の間から木が生えていて、その木が紅葉しているという涸沢ならではの光景です。なんだか海の中のサンゴ礁のようなイメージがありますね。
岩だけだとなんだか素気ないのですが、こうやって少しでも色が入ると一段と違うものです。





10時07分
綺麗な紅葉の向こう側には北穂が見えます。夏に登った時とはすっかり表情が変わっています。下界では衣替えの季節。街を歩くと秋物がたくさん目に付きます。山も同じく秋に衣替えです。もちろん冬になれば真っ白に衣替ですね。
今年の穂高はどんな雪化粧をするのでしょうか。





10時14分
夏に縦走した北穂高岳から涸沢岳の稜線を見上げます。
不思議なもので見る角度によって全く違う場所のように見えてしまうんですよね。
こうやって下から見上げる北穂〜涸沢岳の稜線は目の前にそびえ立つ壁のような印象があります。





10時50分
そして、コース中難易度の高いザイテングラートが近づいてきました。
写真手前の岩を登って行くことになります。
話を聞くと9月だけでこのザイテングラートで死亡事故が3件発生しているということです。いずれも降りのさいの事故だったようですが、天候、疲労、技術や体力といった複数の要因が絡んで悲しい現実になったものと推定されているようです。

統計によれば馬の背のナイフリッジなど本当に危険な箇所での事故はほとんどないのですが、重大事故はこういう何でもないところで多発しているそうです。つまりここは大丈夫という変な安心感が事故につながる原因になっているということで、慎重に登るよう自分に言い聞かせます。





11時02分
さて、ザイテングラートの取り付け部分に少し広いスペースがあり、多くの登山者はここで休憩しています。私もここでザックを降ろし休憩させていただきます。
見渡してみると遠くには常念岳から蝶ヶ岳の稜線がよく見えています。屏風岩も上の方はだいぶ紅葉が見頃になっているのがわかります。





11時04分
こちらは前穂高岳です。
険しさが伺えるような気がします。バリエーションルートでこの稜線を踏破する登山者も多いです。さすがに私にはもう無理です。こうやって眺めているだけで十分です。いや一時はボルダリングとかやってみようかと思って色々ジムとか調べたのですが・・・





11時32分
さあ、ザイテングラートを登り始めます。
写真はザイテングラートの一部ですがここを右手に巻きながら登ります。奥穂高岳登頂が目的であれば、これくらいは容易に登り降りできなければ困難を極めます。
三点確保で登っていきますが、要所には鎖が設置されていて大分整備されている感じがします。もちろん稜線上では鎖などないレベルですが。





11時41分
岩場の直登は続きます。
高度感がないのが救いです。前穂高岳のように最後の最後まで岩登りというわけではありませんが、それなりの技術や体力が必要な場所ですので慎重に登り降りすることを忘れずに、しっかりと岩をホールディングしながら登って行きます。





11時44分
北穂高岳が同じ目線に近くなってきました。それだけ高度を上げてきたということです。
それもそのはず。ザイテングラートに取り付いてからはずっと直登ですから一気に高度を稼ぐことになります。
さすがにここまでくると、紅葉というよりはいつもの荒々しい穂高の岩肌というイメージが強くなります。





11時45分
涸沢を振り返ると昨日いたテント場がもうあんなに小さくなっています。実際にテント場にいると広大な場所と思いますが、こうやって上から見下ろすと、穂高の山のほんの一部分なんだということが実感できます。
屏風のコルを経由して徳沢に降りるパノラマ新道が一部見えています。横尾経由より難度が高く時間もかかるコースですが眺めが良いとのことで、今後考えてみようと思います。





11時52分
「ホタカ小ヤ20分」という表示が書いてある場所までくるとザイテングラートもほぼ終盤です。気は緩められませんがコースとしては落ち着いてきます。もちろん岩登りであることには変わりありませんが周囲の景色からも稜線に近づいてきているというのがわかります。
草が枯れていて山の秋を思われる光景になってきています。






12時18分
穂高岳山荘到着。
この天空の小屋にチェックインして気象情報を確認します。予想どおり明日は雨。しかも霧も出るとのことで、明日稜線を歩くのは中止します。そして天候の良い今日中に奥穂高岳の登頂を済ませることにします。





12時29分
南の方から雲が厚くなり始めています。
あまり時間的に余裕がありません。なので小休憩した後、すぐに奥穂高岳山頂に向かいます。往復ですので重たいザックは置いていきます。
山荘から最初に取り付く岩壁がこのコースの最大の難所です。もうこの岩壁に取り付くのは何度目になるかわかりませんし、アイゼンを装備して取り付いたりもしていますので要領は得ているつもりですが、そう言った自信過剰が事故の一番の原因だということを踏まえて慎重に難所をクリアしていきます。





12時55分
ここはこの時期はそんなに難所ではありませんが、春に来ると急斜面の雪渓を登ることになりかなり難易度が高い部分です。

さて、今日の奥穂高岳の稜線は風が非常に強いです。この絶え間なく吹き付ける風は冬の西穂高岳を想像させられます。なんだか懐かしささえ覚えます。風が強く吹き付けているということは天候の変化の兆しなんだろうなと思いながらラストを登っていきます。





13時01分
奥穂高岳登頂
すでに空は怪しい雲に覆われていてベストショットにはなりませんでしたが、今年も秋の奥穂高岳に登頂できました。
いつもと違い早朝ではありませんので比較的登山者が多く集まっています。





いつもと変わらずジャンダルムです。
見ているとジャンダルムに登頂している人もいてさすが登山シーズンだと実感します。左の方には西穂高岳もちょっこり見えていてなんとなく穂高連峰の位置関係がわかるような気がします。





本来明日歩く予定だった吊尾根と前穂高岳がよく見えます。
今回は残念でしたがまた次回に期待することにします。
こうやって見てみるとやはり重太郎新道という登山道はすごいところに作られているんだなというのがわかります。






上高地方面を見下ろします。
山の上の方から紅葉が進んでいるのがよくわかります。こうやって見ていると上高地まで紅葉が下りてくるのはもう少し先かもしれませんね。





槍ヶ岳方面です。
秋の景色ですね。まあ、こういう雲に覆われた穂高の眺めというのもまた良いものです。
さて、さらに登山者が頂上に向かってくるのが見えましたので混雑する前に山荘まで降りることにします。


※※※※※

山荘にたどり着き、部屋で着替えなどをして身の回りを整えます。今日は飛騨側の部屋で、6名(12名)の部屋に4人という超ラッキーな配置でした。
もしかしたら明日からの天候のことを考えて先に下山する人が多かったのかもしれません。

夕食までの時間は持ってきたお酒とおつまみで時間を過ごします。岳を読みながらお酒を飲むなんて本当に最高のひと時です。思えばこの岳という作品が私の登山に与えた影響が多いです。この作品に触れていなければ、もしかしたら別の山域を登っていたかもしれません。

食後はロビーで穂高岳山荘の上映会がありました。穂高岳山荘の歴史や山荘の一年間を知ることができとても貴重な映像でした。

さて、明日は雨の中ザイテングラートを降りていくという危険度の高い行程になりますので、早めに就寝することにします。





06時27分
翌朝は予報通り雨でした。
ですが、6時過ぎた頃から雨が弱まったのでチャンスを逃すまいとすぐに出発します。霧が出ていますがかなり先まで視界が効きますのでルートを誤る心配はありません。冬山のホワイトアウト寸前のあの状態と比べればはるかに状況は良いです。

9月に起きたザイテングラートの3件の死亡事故はいずれも雨の日の降りで発生したとのことで、同じコンディションである以上、いつにも増してに慎重に下りていきます。集中して降りていたためか、思っていたより早く取り付けまで降りてきました。「もう取り付けまで降りてきたのか」と拍子抜けした感じでした。

涸沢に到着したのは8時00分。なので約1時間半で降りてきたことになります。ちょうど標準時間でした。このコンディションで標準時間で降りれたということは時間的には上々でしょうか。




さて、今年も涸沢の紅葉を楽しむことができました。
天候も荒天が続く中、運良く2日目だけ回復して素晴らしい紅葉を見ることができました。

さて、紅葉のシーズンを終え、穂高連峰は長い冬の時期に入ろうとしています。
一年間というスパンで考えれば紅葉というのはほんの短い一瞬です。ですがその一瞬で燃えるような美しい姿を見せてくれる。だからこそ魅力があるんです。

秋の穂高・涸沢2016 無事に終えることができました。


お読みいただきありがとうございました。


2016年9月29日〜10月1日



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