冬の西穂(2012年11月)


その頂を白く包まれ神々しい姿となった穂高の峰々。この至高の空間に再び帰るために例のごとく西穂山荘に宿泊しアタックの準備をします。
 しかしながら、この神々しい世界は簡単に目の当たりにすることはできません。今回は寒気の影響で天候は荒れに荒れた状態でした。
 「限界設定」つまり自分がアタックを中止して下山する基準の一つが「ホワイトアウト」です。今回は丸山の手前でホワイトアウトとなり残念ながら自分基準でアタックは中止とし、下山しました。





14時20分
 登山口となる展望園地着。確実に昨年度同時期より雪の量が多いです。

 今回はマイカーでアプローチしました。スタッドレスにして色々準備しましたが、帰りの平湯温泉付近が凍結していたくらいで、今回はあまり買ったばかりのスタッドレスを実感する事はなかったです。ま、良かったというか・・・
 
 新穂高ロープウェイの駐車場は500円/6hなので駐車場は登山者専用無料駐車場を利用します。ロープウェイ入口から10〜15分くらい歩くのですが、3千円以上の駐車料金を払うことを考えれば歩いた方が良いです。ちょっとした準備運動にもなるし。ちなみに長野道松本IC方面から来るときに通過する安房峠のトンネルは普通車片道750円、ETC利用可ですが何とカードを専用の読み取り機に挿入するというとってもレトロな方法で通過します。安房峠は冬期閉鎖しているので残念ながらこの750円をケチることはできません・・・
 
 登山者専用駐車場は最初どこにあるかわからず少し探してしまいました。新穂高ロープウェイの手前にトンネル(というか雪崩よけ)があるのですが、その途中で駐車場に下りて行く道があります。ただ、翌日帰るときはロープウェイ乗り場に近い駐車場が登山者無料駐車場として解放されていました。ま、実際行ってみて近い方を利用するのが良いですね。





14時24分
 さて、ついに今シーズン初の雪山登山の開始です。
 雪も適度に締まっていて歩きやすいです。最後に来たのが今年の3月なので実に8ヶ月ぶりの西穂です。なんか懐かしい雰囲気ですね。





14時39分
 しばらく登ると独標から主峰までが見渡せるようになります。

 初日にこんなに美しく見えたのは多分初めてです。やはり雪の付き方が去年と比べるとハンパなく多いです。

 空気が冷く張りつめています。でもそれがいいんです。停滞しているわけでないので、冬山用手袋をはめたり靴下を二重にはくなど末端神経の対策さえしておけば全く寒くありません。逆に熱くて汗が出るほどです。





14時46分
 ふと見上げると、今日宿泊するに西穂山荘が見えました。目的地が見えるというのはとても安心しますね。
 ちなみにこの写真は相当ズームしていますのですぐ近くにあるように見えますが実際はまだまだ遥か遠くです。





14時54分
 登山道は完全に雪で覆われていています。アイゼンが気持ちいいくらい効きます。当然ワカンも持ってきましたが出番はなさそうです。

 とても静かですね。雪は消音効果があるのでしょうか。日々の喧噪から解放されて、この静かで美しい世界にいるというのが本当に癒しです。





15時00分
 丸山とその付近の稜線です。
 色々情報として聞いていたのですがすっかり雪で覆われていてちょっとびっくりです。はやくあの稜線へ行きたい! そんな気持ちを抑えつつ自分のペースで先へ進みます。





15時36分

 ここは、もはや忘れる事の無い場所。ここへ来るたびに思い出します。

 昨年、大雪が降った直後に登ったので山荘まで7時間近くかかり、最後に遭対協の方が出動し合流した場所です。もはや思い出となっていますが、改めてご迷惑おかけして申し訳なかったと感じます。





15時52分
 西穂山荘着。
 山荘の裏手からの景色を一枚。
 この後、山荘で受付を済ませます。もう分かっているので部屋番号だけ聞いておきます。明日は寒気が入ってくるので今日以上の天候は期待できないため、すぐに稜線へ上がる事にします。





16時18分
 西穂山荘のすぐ側の丘を上がると森林限界を突破します。そこから見る景色が素晴らしいです。焼岳が映っていますが前回10月の秋の穂高の時と比べるとまるで様子が変わっています。完全な雪山ですね。





8ヶ月ぶりに帰ってきました。冬の西穂。
 この光景を見た瞬間思いました

「ここが自分の帰るところなんだ」

 時間的に少し急げば丸山まで往復できますが、誰もいないこの場に留まって自分のあるべき場所を見上げる事にします。





晴れていればもっと美しいのでしょうが、みごとな雲海を見る事ができました。
 しばらく留まっていたものの氷点下7度の世界で停滞しているとさすがに寒くなってきます。風も出始めましたので山荘へ戻る事にします。

 明日の天候が少しでも良くなる事を願って(といっても荒れるということは分かっているのですが・・・)暖かな布団でぐっすり眠ります zzz...





06時54分
 翌朝は予想通り荒れた天気でした。
 状況的には今年の1月に登ったときと同じなので、独標まではいけるだろうと思い、重装備に変更して登る事にします。
 山荘付近はまだましですが、昨日いた地点まで上がると立っていられないほどの暴風でした。ただ若干今回の方がましかな、っていう程度。





07時11分
 これも厳冬期の冬山でよく見る光景。

 森林限界を突破すると風を遮るものが何も無くなるので、高山植物がダイレクトに暴風に吹き付けられています。こんな過酷な状況を耐え忍んでいる姿は自分にとっても励みになります。自分も頑張らなきゃなって。なので天候が荒れていても励みを得るために登るんです・・・





07時11分
 丸山への稜線を見渡します。この写真のあと少し先へ進みますが真っ白で何も見えません。ホワイトアウトの前兆です。

 ホワイトアウト ー 360度が真っ白になり地面と空の区別がつかなくなる。自分が立っているのか寝ているのかさえ分からなくなり、どちらへ進んでいるのか分からなくなる。結果として絶壁に向かって歩いているのに気付かず滑落死したり、違う尾根に入り込んでしまい遭難死する可能性が大 ー 熟練した方ならコンパス等を屈しして登れるのでしょうが、自分はどんなに意気込みがあってもホワイトアウトになったら絶対に進まない事にしています。

 平成24年12月1日07時11分、ホワイトアウトのためアタック中止。





まだ視界があるうちに急いで山荘まで下ります。

 山荘まで下りてしまえば森林限界より下になりますので、猛烈な吹雪が直接吹き付ける事はありませんし、山荘内で安全な状態になるまで待機できます。





10時23分
 無事に山荘まで引返す事ができました。重装備から軽装備へ変更し下山を開始します。森林帯に入ると風が穏やかになりいつもの静かな雪山になりました。
 昨日と違って樹氷がとても美しかったです。

 展望園地まで戻ってくるとロープウェイが強風で動いていないとの事でした。3時間ほど待ってやっと動き出したので駐車場に戻ったのは午後になってからでした。

 さて、展望園地から山頂を見上げると何と! 一瞬ではありますが西穂の峰々が美しい姿を現してくれました。今回の自分の撤退という判断をほめてくれたんだな、なーんて勝手な気持ちになりました。でも、また次の機会においでよと言っているようにも思えました。



 というわけで何だかナルシストな終わり方になりましたが、いよいよ今シーズンの冬山登の始まりです。今のところアプローチの関係で西穂高岳しか登りませんが(あ、丹沢も少し)、それでも来るたびに様子が違うその姿は大変魅力的です。
 さて、次回の西穂はどんなドラマが待ち受けているかな??


ここまでお読みいただきありがとうございました。




2012年11月30日





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