春の西穂(2019年5月14日)


例年5月連休後は奥穂高岳へ登頂する「穂高の春」を企画しています。
今年も連休後を狙って計画していたのですが事情により一泊二日の日程しか取れなくなってしまい、この日程だと自分的にはかなり厳しいので奥穂高岳は取りやめ、代わりに勝手知ったる西穂の稜線に出かけることにしました。

天候は期待できないことはわかっていたので今回は各種天気図等から自分なりに予測を立て実況と比べるという気象庁の研修のようなことをしてみました(この研究成果は「明日晴れるかな」のコーナーでご紹介する予定です)。
アタック日の二日目は独標登頂後、徐々に近づいてくる雷鳴に恐怖感をあおられつつ必死で西穂山荘まで下山しました。





10時08分
今回は鍋平駐車場が解放されていましたので、鍋平駐車場の登山者エリアに停めました。鍋平駐車場に停めれば新穂高ロープウェイの第二ロープウェイに直接乗り入れることができます。
ちなみに早朝にくると「登山者の方は登山者専用駐車場に停めてください」と放送されていたり、先へ行こうとすると「これより先には登山者専用駐車場はありません」という看板が出ていたりして、観光客と登山者のトラブルが絶えないんだろうなと思ったりします。紅葉の時期とかは駐車場の争奪戦になるようですから暗いうちからやってくる登山者に占領されてしまったら、そりゃトラブルになりますね・・・





10時11分
登山者専用駐車場から第二ロープウェイ乗り場は10分程度歩きます。その分駐車料金は半額ですが(300円/日)。
それでも遅い春を感じながら歩くことができ全く苦はないです。麓は春が訪れており稜線はまだまだ雪を頂いている状態。絵になりますね。
連休後ということもあり新穂高ロープウェイは空いています。





10時55分
春から一気に冬になりましたと書こうとしたのですが、ロープウェイ終点の千石園地は積雪はあるものの既に春の陽気。
もう5月中旬ですからね。上は厚手の登山用Tシャツのみです。ジャケットも持ってきましたが使いません。「寒くない」というのが何だか衝撃的です。





11時00分
すっかり定番になった登山センターの小屋。
基本的な積雪があるのでまだまだ入り口は塞がれていますが小屋の屋根を覆っていた雪はなく、あとは日が進むにつれ積雪量が減っていくのを待つばかりと言ったところでしょう。
ここまできてアイゼンを装備します。雪質は完全に春の雪。この時間なのでもう少しシャーベット状になっているのかと思いましたが思ったよりも硬くて歩きやすいです。





11時14分
そして、見えてきました西穂高岳の稜線。
雪がありません。
山荘の公式な情報によるとピラミッドピーク下部の雪壁と第2峰のトラバース部分に積雪が残っているとのことです。みてみると第2峰は雪が残っているのが確認できます。
ただ、この時期の奥穂高岳は通常ならほぼ雪の上を歩いて山頂まで行くことを考えると、こちら側(西穂側)は融雪するタイミングが早いんだなと実感します。





11時14分
流石に樹林帯は残雪が多いです。稜線は風で雪が飛ばされますが樹林帯はそのまま積もりますので稜線に比べると積雪が多いのでしょう。日が高くなっている影響もあり照り返しが強烈です。すかさずサングラスをかけます。
この時期の雪は蹴り込みながら上り下りしますが、今日は雪が硬くアイゼンで普通に歩いていけます。
ただ、暑い。暑い。暑い。吹き出てくる汗を拭き拭きまるで夏山登山のような状態で登ります。





12時10分
山荘直下の最後の急登部分です。
ここも想定していたような雪の崩れはあまりなく、そういう意味ではあまり苦労しませんでしたが、何よりも暑いというのがかなり辛いです。
雪の崩れがあまり無いとは言っても厳冬期の締まった雪と比べてしまえば非常に歩きにくいです。なので既に登り始めてから1時間以上経過しており厳冬期の登山と比べるとペースが落ちています。





12時21分
西穂山荘到着。山荘前はすっかり雪が溶けウッドデッキのテラスが現れています。
さすが連休後。到着した時点では撤収中のテントが2張、しばらくして稜線から3名が下りてきたのみ。この5人はすぐに下山したので結局今回も山荘貸切になりました。





山荘のテラスで日本酒を始めます。
最高ですね。
厳冬期に小屋の中から雪景色を見ながら一杯やるのとはまた違った良さがあります。風が吹き抜けていく音や鳥のさえずりなど春を実感しながらのんびりとしたひと時を過ごします。

少し風が強くなってきました。空を見上げると暗い雲が広がっています。続きは小屋の中で楽しむことに。





07時07分
翌朝です。
予想通りです。とりあえず丸山まで行ってみる事にします。
山荘裏手の吹き溜まりになる部分は雪が残っていますが春の雪に慣れている方であれば全く問題ありません。
涸沢のような綺麗なステップではありませんが、それなりに刻まれているので楽に登っていけます。





07時18分
基本的に稜線に雪はありません。独標までは一部雪の上を歩く部分はありますが9割以上は雪がない夏道です。アイゼンとピッケルは不要です。
日差しがない分、昨日と比べると涼しく感じます。念のためにソフトシェルジャケットを着ていますが、途中暑くなったり逆に風が出てきて着ていて良かったと思う場面もあり、この時期のレイヤードには苦労するのも理解できます。





07時18分
乗鞍岳や上高地方面を振り返ります。
確実に季節が進んでいますね。
上高地も登山者や観光客で賑わっている事でしょう。





07時29分
丸山登頂
穂高に雨が予想されているのが9時過ぎであるため独標までは間に合うだろうと見込み、独標まで登る事にします。
ただし天候が危険な状況になったら即座に下山することを条件とします。





07時37分
飛騨側と信州側では対照的です。信州側はまだ真っ白ですが飛騨側はすっかりハイマツが姿を表しています。登山道は雪がなくこの部分特有のザレ場になっていて多少苦労します。
足を滑らさないように慎重に進んでいきます。





08時06分
独標から先の岩峰帯が見えてきました。
ピラミッドピーク基部には雪壁が残っているのも確認できます。
さて、ここから独標まではもう一息です。やはり厳冬期にアイゼン履いて雪の上を歩いて行くのとは勝手が違い違和感があります。





08時24分
第12峰は夏道ですので巻いていきます。積雪があると苦労するこの部分も雪がないと安心して歩いていけます(厳冬期と比べてという意味で)。
この時間になって谷底から霧が吹き上がってきました。少し急いだ方が良さそうです。





08時28分
独標直下です。
十分な積雪がない状態ではショートカットは使えず左に迂回していく形になります。丸印や矢印がペイントされていますので迷うことはないかと思います。
雪が着くとまるで地形が変わったかのようになってしまうので積雪期と無雪期と両方歩くとまた面白いです。





08時30分
三点確保で一所懸命登っていると、突然上から「ガァー」という声が聞こえてきてびっくりします。
何事かと思い見てみると、ああ久しぶりに会えました。雷鳥です。
まあ、どんな鳴き声なのかは聞いていたので、そういう意味ではびっくりしなかったのですが、突然大声で鳴かれるとやはりビックリします。
雷鳥も夏バーションになりつつあります。





08時35分
独標登頂
周囲は何も見えません。

遠くの方から雷鳴が聞こえてきました。

「まずい」

耳で聞こえるということは、もう目前まで迫っていると思った方が良いです。

即座に下山を開始します。





まずは第12峰まで安全に降りることです。
ここで焦ってしまうと滑落などの危険が高くなります。

第12峰まで下ります。
ガレ場なので走って降りるわけにはいきません。

少しずつ雷鳴が近づいているように思えます。

こんな時、厳冬期の雪面をアイゼンを効かせながら下りれたら良いのにと思ってしまいます。

徐々に雷鳴が大きくなります。

必死の思いで丸山まで下りてきました。
あともう少しです。

丸山直下は吹き溜まりだったのか残雪があり、残雪を歩くのは慣れているので多少時間が稼げます。

やっと西穂山荘の赤い屋根が見えてきました。

09時25分
無事に西穂山荘まで下りました。

雷鳴とともに今度は雨が降ってきました。

雨具の装備をしてロープウェイまで下りていきます。樹林帯の中なので多少は安心しますがなるべく早くロープウェイまで降りるように心がけます。雨で雪がシャーベット状になっているのが悔やまれます。


無事に下山できました。

春の穂高は素晴らしい眺めですが、同時に不安定にもなり危険と隣り合わせだということも実感しました。

天候に敏感になり過ぎなのかもしれませんが落雷により登山者が犠牲になったばかりです。山の天気というのは気をつけなければなりません。


2019年5月14日


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