冬の西穂(2018年12月16日)


西穂高岳の稜線が積雪してから3回目の登山になります。
12月はじめの異常気象で雪が全部融けてしまうなど、あり得ない状況になったものの結局はいつもの雪山になり一安心しているところです。
それでも例年に比べると雪の量は少なく異常気象の影響がここまで出て来ているのだということを痛感しました。
両日ともに良い天気でしたが残念ながら機材のトラブルで2日目の映像はありませんので初日の様子をご紹介します。





11時02分
新穂高ロープウェイの終点になる新穂高口に到着。
今日は新穂高ロープウェイへ向かう途中、蒲田のT字路を過ぎてしばらくしたあたりで西穂の稜線や槍ヶ岳などが目に飛び込んできました。
ロープウェイを降りると飛騨側はだいぶ雲が出ていますが信州側は青空です。西から天気が崩れてくるようですね。ここまでは天気図通りのようです。
相変わらず観光客の皆様は積もった雪に興奮しているようです。写真を撮ってくれと言われ撮って差し上げます。
さて、一通り準備ができたところで出発することにします。





11時07分
登山センターは冬季閉鎖中です。
さて、若干ですが積雪が増えたような気がしますが昨年のように明瞭に積雪が増したとは言えない状況です。昨年の11月末の写真と比べましたが、昨年11月末の方が積雪量は多かったです。参考までに載せておきます。12月ではなくて、11月の写真ですよ!!


2017年11月23日の積雪






11時09分
先週から積雪があったようで樹林帯では9割が雪の上を歩けます。
ただし、まだまだ積雪が少なく岩が出ているところもありますし、アイゼンの刃が下の岩に届く場所もあり、気をぬくと刃を引っ掛けてしまいバランスを崩して転倒しそうになってしまいます。
12月の中旬にこんなことを書いているのが悲しいですね。例年だったら「冬ルートにコースを付け替えました」なんて情報が聞こえてくる頃なのですがね。

今シーズンから樹林帯でトレッキングポールを使うのを止めています。人それぞれですが自分の場合はバランス感覚が鈍ってしまいトレッキングポールに頼りきりになってしまうことに危機感を覚えたのでそうしています。





11時16分
西穂高岳の稜線が見えて来ました。
これは確実に積雪が増えていますね。写真ではわかりませんが登山者が複数名確認できます。今日は素晴らしい登山になったでしょうね。駐車場に止めてあった車の台数からしてもっとたくさんの登山者とすれ違うかと思ったのですが、思ったよりすれ違った人数は少なかったです。それでも皆笑顔でした。





11時28分
樹林帯の中でも積雪量は異なっています。
写真の箇所は比較的積雪量が多く楽に歩けます。この週末に多くの登山者が入山したとみられ雪が踏み固められているのでそれも好条件です。積雪直後の樹林帯はその量にもよりますがワカンが必要な場合もあり歩くのに苦労します。
稜線でもそうですが「吹き溜まり」になるような場所では降雪直後に胸ぐらいまで沈んでしまうことも珍しくありません。なので多くの登山者が行き来し踏み固められると大変歩きやすくなり安心できます。





12時00分
ここまで上がってくると山荘はもうすぐです。
山荘までの道で一番傾斜が大きくなる部分ですので下山時にすれ違うときに「山荘までどれくらいですか?」と聞かれることがよくあります。
この部分は岩の段差が大きいので、今日ぐらいの積雪量ではアイゼンの刃が下の岩まで届いてしまいます。





12時03分
ここはもっと雪が積もり空が晴れわたっていると、いい絵が撮れる場所ですが、まだまだ雪が少ないのが一目でわかります。
だいぶ疲れてくる頃なのですが、気をぬくとアイゼンの刃が岩に引っかかりなんとも言えない絶望感に駆られます。
まだ夏道なのでこの場所で1時間が経過してしまいました。完全に冬道になると1時間を切ることができるのですが、まだまだ詰めが甘いようです。





12時17分
出発から1時間15分。
う〜ん、ダメだ。

さて、通常ならここで山荘に入っていってラーメン食べて受付をして・・・というパターンなのですが、今回は翌日の天候が現時点で読めないのと、だいぶ雲は出て来ているものの稜線の姿がはっきりと見えているので、先に上がることにします。
多分、一度山荘に入ってくつろぐと腰が重たくなるような気がするので、そのまま重い荷物を背負って上がっていきます。





12時23分
山荘裏手の丘へ上がる部分もだいぶ積雪して歩きやすくなりました。この後夜間に降ったので翌日はさらに登りやすくなっていました。
稜線に上がると冷たい風が吹き付けて来ます。こういう気象条件を体感すると「ああ、やっと厳冬期らしくなって来た」と思えます。鉛色の空に飛ばされそうなくらい強い風。これこそが厳冬期の穂高なんです。
よく「風が強すぎるー」といってびっくりする方もいますが、いやいやこれが厳冬期では普通なんです。3月下旬の安定期をイメージしてはいけません。





12時24分
見えて来ました西穂高岳の稜線。
前回はかろうじてハイマツの上に雪が乗っていて白い峰になっていましたが、今回は雪がハイマツや登山道を完全に覆っておりやっとそれらしい姿になっています。もちろん例年に比べれば雪は少なくアイゼンの刃が岩に当たることもあります。





12時30分
不思議と誰も踏み入れていない場所がありました。
夜間に降雪して朝一番で出発したときにはこんな新雪の中を歩いていくことがありますが今日のこの時間にこんな場所が残っているというのも珍しいです。





12時38分
西穂丸山に登頂。
相変わらずここは風の通り道で停滞していると冷えて来ます。
もう少しどんよりしていると厳冬期らしくていいのですが・・・ってマニアック過ぎだろ〜 って声が聞こえて来そうです。





前穂高岳とその先の明神岳も雪化粧しています。
空を見上げると山岳波の影響と思われる雲が・・・ あ、いや止めておこう。





反対側を見ると雪を被った焼岳がいつも通り煙を上げており、そのはるか遠くに乗鞍岳が真っ白な姿でただずんでいます。





さて、山荘に戻ります。
まずは西穂ラーメン。これに限ります。

その後着替えや荷物の整理をしてからいつもの雪見酒を始めます。

今回は自分を含め6名の宿泊でした。



さて、翌朝は予想に反して青空が広がっていました。
天気図である程度予報しても、どんな性質の天気なのかまで読み込まないと山では想定外が起こります。今回は良い方向に外れたので「よかった」で済まされましたが、逆に晴れを予想しておきながら実際は吹雪だったりすることもありますし、そもそも予報自体が困難なこともあります。

気象庁は預言者ではありませんから当然なが予報と実況が一致しないこともあります。だからこそ「的中率」「見逃し率」「空振り率」などの精度の評価を常に行なっているわけです。
ちなみに予報が当たったかどうかを示す数値はここ数年でほとんど変わっていないとのことです。つまり、今の予報技術における精度は限界に近くなっているようです。

結局、マニアックな話になりましたが、要は想定していない気象の変化は容易に起こり得ること、それが厳冬期にもなれば自分の命にも関わってくるということを念頭に置き、途中で中止して引き返し次回にアタックするなどの柔軟な対応が必要なのだと思います。


冒頭にも書きましたが機材のトラブルで二日目の写真はありません。夜中にしっかりした降雪があったようです。昨日以上に白く美しい西穂高岳の峰々は自分の心の中にしっかりと映しておきました。



2018年12月16日〜17日








登山記録トップへ
ブログトップへ

Copylight 2015-2016 Myclimbing Report All Right Reserved.