冬の西穂(2018年12月10日)



12月の初めに異常な高温となり積雪0㎝となるという信じられない状況から1週間も経たない今日この頃。いっときはどうなるかと思いましたが流石に異常気象でも季節には勝てません。量は少ないにしても確かな積雪があり雪山を楽しむことができました。
天気は12月の穂高にしては珍しく快晴。ただし太平洋側は雲が多くなっており、とても分かりやすい空模様でした。





12時36分
ロープウェイの新穂高口に到着。
雪そのものは多くないのですが「上空に寒気が入ってきている」と天気予報で言われているその「上空」に相当する場所にいます。気温は氷点下11℃。一度降った雪は融けずに木々に着雪しています。
アイゼンを着けたり準備をしていると観光客の方が声をかけて来ます。この天候の中で山に登っていくのにびっくりする人が多いです。さて、今シーズン2回目の雪山のスタートです。





12時51分
こうやって見渡すと木々は白くなっており季節が進んだことを実感しますが、実は積もっている雪は逆に前回よりも少ないように感じます。雪は踏み固められており雪があるところは歩きやすいのですが、何せ積雪量は少ないのでアイゼンの刃は下の岩まで届き、ガリガリいいながら登っていきます。





12時58分
積雪が多くなると目印に立てられる旗が準備されています。
今はまだ登山道がわかりますが、積雪が増えるとどちらへ進んで良いかわからなくなる場合があります。こんな時に山荘スタッフにより設置された目印が役に立ち、幾度となく助けられて来ました。
明日は天気が良いのですが、明後日からはまた降雪が見込まれるため準備しているのだと思います。さすが効率良いですね!





13時40分
山荘近くになると標高が上がるせいか木々の着雪が一層多くなり、写真だけ見ると年が明けた本格的な厳冬期と変わらないようなイメージです。それでも足元はまだまだ夏道に軽く雪が乗っている程度で、シーズンが始まったばかりなんだと思い知らされます。
この時、実は急いでいました。なんでかというと西穂ラーメンの注文が14時までなのでそれまでに到着すべく山荘までの登山道で一番急なこの斜面をフルパワーで登っていたのです。「そりゃちゃうやろ〜」って声が聞こえて来そうですが、この時間なら間に合う!と確信した時に不思議と力が湧き出て来るものです。ラーメン一つで・・・





13時49分
西穂山荘到着。
やはり雪は少ないです。雪の量で言えば平年より半月くらいズレているでしょうか。
何はともあれ西穂ラーメンに間に合いました。アイゼンを外し荷物を外にほっぽらかして受付へ行きすかさず注文します。いやいやこれはルールですからね。14時過ぎたらオーダーストップ。厳しい雪山ではルール遵守が命を救います。って、それは違う話だろ〜!! って一人で突っ込んでいるうちにラーメンが出来上がったので美味しくいただきます。





さて、受付を済ませて部屋に行きます。今日の宿泊者は自分を含めて4名。ただし3名は女性なので今日も個室状態です。
外は綺麗な雪景色で酒も進みます。書庫から「岳」も持って来たのですが雪景色に見とれて結局読まずじまいでした。時々雲が抜けて霞沢岳が綺麗に見えるのですが、写真撮ろうと外に出ると再びガスってしまう、といったことを何度か繰り返し、最終的には雲が抜けきらず夕日は見れませんでした。





07時52分
翌朝です。
雲がかかっていて、雲の切れ目から少しだけご来光が見えるという状況でした。
今日も積雪量からして岩峰帯はまだまだ危険な状態ではないかと想定していたので最初から目標は独標にしています。独標だと山荘からは往復2.5時間なので出発を急ぐ理由もなく先回同様8時ごろの出発にします。
今日は昨日とは変わり日本海側が晴れています。





07時58分
山荘裏手の丘を登ると独標から山頂までの稜線が目に飛び込んできます。12あるすべての峰が見えるわけではありませんが、一番左手に見えている山頂はここから先は位置関係から隠れてしまい独標手前まで見えなくなります。
よく右に見えている目立った峰を山頂と間違える人がいますが、あの目立つ峰はピラミッドピークという頂上から数えて8番目の峰になります。そのピラミッドピークが朝日に照らされて白く輝いて見えています。





08時02分
反対側を振り返ると手前に目立って見えるのが焼岳、遠くの方には乗鞍岳が見えています。そして空を見上げると非常に興味深い雲の出方になっています。まるで空に線を引き、線から南側が低い層状の雲、線から北側が晴れていて薄い高層雲が出ています。北と南で全く空模様が違うというのもなんだか魅力的ですね。





08時02分
降った雪が融けることなくハイマツなどの上に残っていますので前回来た時より雪が増えたように感じますが、実際の積雪量は前回と同じかそれより少ないくらいです。アイゼンの刃が下の岩まで届くことが多く、慣れていないと変につまずいてしまいます。
それでも明日以降、降雪が予報されており、このまま雪が増え続けていくものと思われます。「思われます」というより「願います」と言った方がいいでしょうか。

風が強いという話もありましたが、実際稜線に出てみるとこの時期ではごく普通、もしくは弱いくらいの風でしたので安心します。風速10m/sもないくらいでしょうか。場所によって瞬間的には10m/s超えることもあったかもしれません。これが20m/s超になると歩くだけでも苦労します。特に稜線上では大変恐怖感を感じることもあります。





08時12分
丸山登頂。
ここは風の通り道になるので今日みたいな冬型の気圧配置の日は飛騨側(山頂に向いて左側)から強い風が吹き付けて来ます。
少し普段とは角度を変えて撮ってみました。特に意味はないです。
それでは、今日も独標に向けて登っていくことにします。





08時26分
積雪量が少ないので場所によっては雪が積もっていても地面の小さい岩の上を夏道と同じ感覚で乗り上げていかなければなりません。そういう意味ではアイゼンを履いて歩く今の時期が一番歩きにくいかもしれません。
それでも昨日は多くの登山者が登ったとみられ、雪は踏み固められており吹き溜まりになるような場所ではアイゼンが機能して楽に登ることができます。





08時49分
場所によっては割と積雪がある場所もありますが、それでもこの時期にしては少ないと思います。
写真の場所は地形の関係から風が弱くなる部分です。狭い部分ですので人数が多い場合は迷惑になるので避けるべきですが、他に登山者がいない場合などは、この風が来ない部分で軽く休憩することもできるかもしせません。
私もここで軽く立ち休憩させていただきます。





08時56分
さあ、独標が見えて来ました。ここまで歩いて来た感覚からするとさほど苦労することなく登れるのではないかと思いますが、それは実際に取り付いてみないとわかりません。
なので、まずは独標直下まで近づいていくことにします。





08時56分
さて、ここから先の稜線は積雪の状態によって都度ルートの選択をしなければなりません。前回通ったルートが今回も通用するとは限りません。
写真の場所も後から考えると先行者が歩いているルートが正しい判断だったと思います。
トレースがすべて正しいとは思わないことです。雪庇ギリギリに付けられたトレースがあったり、間違ったルートで歩いたトレースを皆が踏襲してしまい既成事実になっていたりするような時もあります。





09時03分
そして独標直下まで来ました。
ここも雪の状況によってルート取りが変わってくる場所です。積雪が増えるとショートカットができるようになるのですが、今日はまだまだ積雪量は少なく夏道をなぞっていった方が安全です。
雪でマーカーが見えにくくなっていますので、よく周囲を見ながら進まないといけない状況で、どっちへ進めば良いか迷う人も多いかと思います。

逆に積雪が多く降雪直後の場合は写真の先行者がいるあたりはすべてラッセル状態になり、キックステップで蹴り込んで行かないと進めない状況になります。3月ごろの安定期でもそのような状態は容易に起こり得ますのであらゆる局面に適切に対応できなければなりません。





09時15分
西穂高岳独標登頂。
最後の独標手前は夏ルートが有効でした。
恐らく多くの登山者が上り下りしたものと思われ、雪は踏み固められておりアイゼンが効くというのが有難かったです。

標高の高いところは完全に雪山らしくなりました。いっときはどうなるかと心配したのですが季節は確実に進んでいるようです。





独標から先の稜線を見渡します。
ここから先の登山ルートは誰も踏み入れていないようで、明らかに危険な状態です。試しに独標を山頂側へ少し下ってみましたが、雪が安定しておらず、このような状況ではこの先の第10峰、第9峰は大変危険であることが予測できます。
もう少し雪の状態が安定していればピラミッドピーク辺りまで考えていたのですが、まだまだシーズンは始まったばかりですから今日は予定通り独標で戻ることにします。





10時17分
時間があるので急いで降りるのは勿体無いので景色を楽しみながらおりていきます。
山荘近くまで下りてくるとハイマツが雪を被っている光景に出くわしました。もうひと降りすればハイマツたちも完全に雪の下になってしまうかもしれません。そうなると春が来るまで雪の下でお休みすることになります。





山荘まで降りてくると、雪だるま用の足場が組まれていました。
さて、今年の雪だるまはどのぐらい大きくなるのでしょうか? というよりも年始に間に合うのでしょうか? ひょっとしてまさかの大雪がくるとか?

山荘で休憩した後、ロープウェイへ下山します。
今日は月曜日ですが天気予報も良かったため誰にも会わなかった前回の下山時と比べると比較的多くの登山者とすれ違いました。





途中、西穂山荘がよく見える場所があります。
木々が白く美しく着雪しており気温が違うだけで随分と雰囲気が違うものだと感心します。
これからの時期、晴れることの方が珍しい気候になっていきます。
今回は天候に恵まれ素晴らしい雪山登山になりました。それでも雪山はスリーシーズンに比べて危険が高いのは事実です。冬の西穂高岳の稜線に挑むのはもう数え切れないくらいになりますが、登れば登るほど自分の未熟さを感じますし、雪山の恐ろしさというのが身にしみてわかるようになって来ます。
「安全第一、頂上第二」というのが最近の自分の流行りです。

これからも安全な登山を心がけていきたいと思います。



2018年12月9日〜10日










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