冬の西穂(2018年11月26日)



09時44分
新穂高の登山者専用駐車場に到着しました。駐車場から見る笠ヶ岳の稜線はすでに冠雪しています。ここからは穂高は見えませんが恐らく同程度まで積雪していることでしょう。
毎回書いていますが、登山者専用駐車場はロープウェイからかなり離れた川沿い(深山荘奥)にあります。登山者は基本的にこの無料駐車場に止めます。ただし積雪期になると、新穂高センター近くの県営駐車場が登山者専用駐車場として解放されます(毎日ではないようです)。なので、これからの時期は一旦、新穂高センターの方に行ってみて解放されていれば県営駐車場を、解放されていなければ深山荘奥の登山者専用駐車場に止めるのが良いと思います。
ちなみに県営駐車場は3月の天気が良い週末などはすぐに満車になってしまいます。中には無理矢理止める人もおり、最悪出れなくなる可能性もありますので注意が必要です。





10時33分
ロープウェイ終点(新穂高口)に到着。
前回来た時から2回ほど降雪があったようです。まだまだ雪は少ないですが、やっと雪山らしくなってきました。事前の情報からアイゼンを付けてもおかしくない状況であることがわかっていますので、最初からアイゼンを装備します。
天気は曇りです。明日が比較的期待できる予報になっていますので今日の天気は特に気にしません。




10時39分
さて、毎度毎度の登山届出所です。この時期はすでに閉鎖しています。3月にもなると積雪でこの届出所が埋まってしまいます。来るたびに増えていく積雪量がこの小屋を目安に目で実感することができます。
今日はまだ雪で覆われるなんていうレベルではありません。これからの積雪に期待することにしましょう。





10時42分
本日の樹林帯(山荘まで)の状況ですが、雪が固まっているので想定よりも歩きやすかったです。ただ、基本的な積雪量が少ないのでアイゼンの刃が下の岩や木の根に引っかかることが多く、気をつけないとつまずいて転びそうになってしまいます。今日の状態だったら慣れた方ならアイゼンがなくても問題ないかと思います。





11時51分
ここは山荘間近な場所なのですが、まだまだ脇の笹が目立っており、夏道に毛が生えた程度の状況です。11月はその年によって積雪量はまちまちです。昨年同時期はすでに膝くらいまで沈むほど積雪していました。今年は暖冬と言われていますが、暖冬だからと言って必ずしも雪が少ないというわけではないようです。過去には暖冬と言われた年に記録的な大雪となったこともあったようです。
さて、今シーズンはどうなのでしょうか??





11時58分
西穂山荘が見えてきました。
やはり冬山装備をすると重くなりますね。アイゼンやピッケルやワカンに加えて万が一のためにアイスバイル2本など冬山特有の装備だけでもかなりの重量になります。なので今回は1時間以上かかってしまいました。もっと積雪量が増えればルートが直登に近くなるのでもう少し時間の短縮になるとは思いますが、何よりも日々のトレーニングが不足しているのが原因かと思うこの頃、そしていつも同じことを書いているような気がするのですが・・・

到着して山荘の中に入っていきます。どうやら今日の宿泊者は私だけ、つまり「貸切状態」です。でもって、この時期山荘貸切ということは明日の稜線も登るときは貸切確約ということになります(どんなに早く到着してもロープウェイ始発の関係で稜線に取りかかれるのは10時過ぎになる。上高地や焼岳方面からはほぼ入山不可)。

到着した時は日帰りや下山者が立ち寄って賑やかだった山荘も午後2時頃には静まり返ってしまいました。雪が少ないのでまだ「雪見酒」というほどではありませんが、のんびりくつろがせていただきます。





16時16分
ふと気がつくと雲が抜けてきており陽が差し込んできました。そしてしばらくすると夕日が空を紅く染め始めました。完璧な夕日ではありませんでしたが、それはそれで美しい光景を演じてくれました。
充電中だった携帯電話を引っこ抜き、携帯でも撮影しました。最近の携帯のカメラも性能が良くなっていますが、まだまだ一眼レフにはかなわないように思えます。

しばらくすると夕食の時間になりました。一人しかいないのですがいつもと変わらず配膳していただきなんだか恐縮です。夕食を美味しくいただき、今日はあまり十分に仮眠できていなかったのか食後の酒がイマイチ進まず、コーヒーを飲んで就寝してしまいました。





06時31分
翌朝です。
目覚めて外を見ると何と快晴で地平線が紅くなっています。これはご来光が期待できそうです。日の出は6時30分頃のようですので、それまでに朝食を済まして撮影のスタンバイをします。今日は暖かな陽気のようですが、標高2300m以上ある西穂山荘の外は氷点下3℃。停滞していると寒いです。
それでも見事なご来光を写真に収めることができました。





07時53分
出発です。
実は降雪直後の稜線(特に独標から先)が一番危険です。まだアイゼンやピッケルが機能しない上、雪が積もっているため下の岩が見えないからです。なので、今回は最初から独標でストップする計画でした。
独標止まりですので往復2.5時間を見込んでおり、出発は少しゆっくりすることにします。
空は快晴です。天気図通りなら日本列島の真上に高気圧がきており好天が見込まれるのですが、実際は周囲の低気圧や大気の不安定な状態が足を引っ張り雲の多い空でした。
さあ、シーズン最初の雪山です。





08時02分
山荘裏手の丘を少し登りかけたところですが、遠くには乗鞍岳、手前には焼岳が見えています。焼岳は最近のニュースで微震が繰り返されているものの噴火警戒レベルを上げることは今の所考えていないとの気象庁の発表が報道されました。今日の焼岳は至って落ち着いており、山荘に宿泊していても全く揺れなどは感じませんでした。
気象庁のホームページでは「浅部の火山活動の活発化を示す現象は認められていません」とはっきり書かれており、観測データーから噴火につながるものではないことが科学的に示されています。





08時08分
そして見えてきました。西穂高岳の稜線です。ここは山荘裏手を登り最初に稜線が見える場所から撮影しています。この部分からだと西穂高岳山頂が一番左に見えますが、ここを過ぎてしまうと位置関係から独標付近まで山頂は隠れてしまいます。

さて、稜線はだいぶ雪が積もっているものの、まだまだハイマツが顔を出していて本格的な雪山シーズンはこれからだということを実感させられます。前回来た時は「次回ももしかしたら積雪がないかも」なんて冗談書きましたが、無事積雪しています。暖冬といえど季節には逆らえませんね。
稜線ですので場所によって風の通り道となっており強弱があります。残念ながらまだこの風の通り道を完全に把握していないので今後勉強していきたいと思います。





08時08分
稜線の状況ですが、どうやら昨日少しだけ降雪があったようです。吹き付ける風も相まって登山道はパウダーが乗っています。「新雪フミフミ」とまではいかないですが、新鮮な雪道を踏みしめていくのはテンション上がりますね。

稜線も樹林帯と同じく基本的な積雪量は多くないので、アイゼンの刃が下の岩に当たり足元が不安定になることが多いです。 場所によっては多めに積雪しているので安定して歩ける場所もあり、また雪が固まっていてアイゼンが気持ちよく効く場所もありました。ただし独標に近くなるとそうは行かず危険な状態が多く見られました。





08時17分
可愛いトレース発見。
貸切と思っていたのですが、どうやら小さな先行者がいたようです。
こういうのを見ると穂高の稜線にも多くの生命があるのだということを実感します。





08時20分
丸山到着。
前回は何も見えなかった景色も今日は冠雪した笠ヶ岳の稜線が綺麗に見えています。空には雲ひとつなく貴重な青空になっています。
ここは風の通り道なので今日も周囲と比べると強目の風が吹いています。ですが、まだ11月ということもあり動いていると汗ばむ陽気ですのでこの風が意外に心地よかったりします。これから来る厳冬期だと凍りつくような思いをするのですが・・・





08時27分
さて、丸山を過ぎるとしばらくは延々と続く登りになります。
無雪期は岩のゴロゴロしたガレ場なので(ただし意外に安定しています)、ある程度積雪した状態でアイゼンで歩く方が気持が楽です。
今日はまだ十分な積雪でないためアイゼンの刃が下の岩に引っかかり足元が不安定になることが多く結果的に慎重になります。

まだロープウェイの始発すら動いていない時間なので山荘スタッフは別にして西穂高岳の稜線にいるのは自分だけです。最高の貸切です。急ぐ理由など全くないので悠々と登っていきます。





08時48分
はるか遠くに白山が見えています。こちらもだいぶ冠雪しているようですね。
白山がここまで綺麗に見えるということは空気も比較的乾燥していて冬らしくなっているということですね。





09時06分
お花畑と呼ばれる地点を過ぎ、周囲の様子も岩峰らしくなってくると独標から先の稜線が間近に見えてきます。
ここから先は岩とパウダースノーのミックス状態になっていました。つまり、アイゼンは効果なし。でも雪に覆われているのでその下がどうなっているのか判別が付きづらい状況です。アイゼンを履いて登るか外して登るかはその人の技術や経験で判断しなければならない状態です。私自身はアイゼンを履いて岩を上り下りするのは問題ないのでそのまま進んでいきます。後で思ったのですがピッケルはしまったほうが良かったですね。結局使いませんでした。というか使えませんでした。





09時16分
ここは独標手前の第12峰です。
この部分はピンポイントで雪が固まっており、逆にアイゼンでないと苦労するような状態でした。これだから雪は怖いですね。
今日はまだ積雪量が少ないので峰の上を越えていく冬道は使わないことにします。





09時19分
独標直下にきました。
まだ、冬用のショートカットは使えないので(写真で×印が付いているあたりをショートカットします)、丸印の夏ルートをなぞっていきます。この部分は降雪直後は吹き溜まりになりキックステップで蹴り込んで行かないと進めない場所ですが、今回は思った以上に雪はなく逆にアイゼンの刃を下の岩に引っかけないよう慎重に足を置いていきます。





09時25分
独標頂上直下です。
まとまった積雪になるとこの岩は全て雪で埋もれるのですが、今回はまだまだ中途半端な状態です。それでも雪に覆われていますので下の岩の様子がわからず、どこに足を掛けていいか判断に迷います。もちろん雪は固まっておらずパウダーが乗っているだけなのでアイゼンは効果がありません。なので、特に下山時はアイゼンで雪の下の岩の感触を確かめながら、時にはアイゼンの前刃を活用しつつ上り下りしました。
いうまでもありませんが穂高の稜線では最低でも前刃のある10本刃以上のアイゼンが必須となります。できれば12本刃のアイゼンが望ましいです。





09時29分
西穂高岳独標登頂。
結局、下山時も山荘近くまで誰とも会わなかったので、最後の最後まで貸切状態でした。こんな恵まれた天候で穂高の稜線を貸切というのは何という贅沢なのでしょう。
多少雲が出てきました。天気図では高気圧が日本列島の真上に来ていますが、一般的な天気図(地上天気図)には現れない大気の乱れの影響で、写真の後ろ側に当たる部分は厚めの雲に覆われていました。
冠雪しているのはごく一部の稜線だけですが、これから徐々に雪化粧していくことでしょう。





奥穂高岳〜吊尾根〜前穂高岳は見た感じではだいぶ積雪しているようです。





その手前の(写真左側の)西穂高岳の稜線はまだまだこれからという感じです。
ちなみに一番左がピラミッドピーク(第8峰)、その隣が西穂高岳山頂です。

さて、しばらく独標から眺めた後、下山します。
独標直下を降りる時が一番緊張します。まだまだホールドできる岩があるのが幸いです。一度だけですがアイゼン、ピッケルが効かない状態で(ラッセル状態で)ホールドできる岩もない時があり、残り数メートルでしたが断念して引き返したことがありました。その時と比べれば楽に感じます。

先ほども書きましたが、今日は入山者がほどんどおらず、山荘近くまで誰にも会いませんでした。山荘裏手の丘を登ったあたりで外国人カップルが休んでおり、山荘前にはご夫婦が稜線に向けて登る準備をしていたので情報提供をしました。
小屋の中に入り貸切状態で軽食と休憩をします。

樹林帯を降りていきますがロープウェイ乗り場まで誰にも会わず、こんなこともあるんだとビックリしながら降りていきます。

さあ、雪山シーズンが始まりました!!
今シーズンはどんなドラマが待ち受けているでしょうか。


2018年11月25日〜26日










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