冬の西穂(2018年11月10日)


タイトルを「冬の・・・」にしようか迷ったのですが、 もう時期的におかしくないと思い今シーズン初の冬の西穂としました。
残念ながら天気には恵まれず終始霧の中の行程でしたが、それはそれで積雪前の初冬の西穂高岳の稜線を楽しむことができました。






10時00分
11月5日から第二ロープウェイに直接アクセスできる鍋平駐車場は冬期閉鎖になっています。今回はいつもの川沿いにある登山者専用駐車場に車を止めます。
駐車場周辺の木々は色づいていて麓はまだ秋の余韻が残っています。
今日はこの広々とした駐車場に数台の車しか止まっていません。





10時09分
この時期で一番心配なのが、新穂高ロープウェイが動いているかどうか。
風速15m/s以上になると徐行運転もしくは運休になります。せっかくここまできて「本日は強風のため終日運休です」と言われて虚しく帰途に着いたことが何度かありました。
本日は寒冷前線の最接近時を除けば風の心配はないだろうと踏んていたのですが、無事にロープウェイは通常運行していました。第一ロープウェイは毎時00分と30分の出発ですので、10時30分発に乗れるように準備します。





11時02分
西穂高口駅(終点)に到着しました。
軽い霧雨です。もっと本格的に降っているのかと思いましたが想定よりも降水は少ないようです。それでもいつ本降りになるか分かりませんので、ザックカバーやレインコートなど雨天用のフル装備をします。
靴はスリーシーズン用ですが、万が一のために6本刃の軽アイゼンを持参しました。結局出番はなかったですが・・・





11時06分
毎度毎度の登山届出所です。
3月下旬にもなると屋根の高さまで雪が積もります。改めて無雪期の建物を見ると相当な積雪量なんだと実感します。
前回は紅葉シーズンということもあり、わりかし登山者が多くいたのですが今日はこんな天候ということもありほとんど登山者はいません。





11時37分
少し前までは積雪があったようですが、今日の時点では全く雪はなく普通に登っていけます。それでも雨で岩や木の根が濡れていますので滑らないように慎重に足を置いていきます。とりわけ木の根は濡れていると笑っちゃうくらいよく滑りますので要注意です。





11時56分
ここは山荘手前の斜度が一番大きくなる部分です。
ここまでくれば山荘はもうすぐです。初めてくる方は「山荘はまだなの?」と辛くなる頃です。
冬で晴れているとこの部分は結構良い絵が撮れるスポットで自分の中ではお気に入りの場所の一つです。





12時09分
西穂山荘到着
すっかり越冬の準備を終えてこれから長く続く積雪期に備えています。
ここも、3月ごろには一階の屋根の辺りまで積雪します。もう少しすると雪だるま用の足場が組まれると思います。そうなると本格的に冬シーズンになったということを実感します。





テント場は一段下がったところにあります。ここも積雪がピークを迎える頃はこの段差がなくなりほぼフラットになります。
今年は暖冬と言われており、気象庁からエルニーニョ現象が発生したとみられる旨の発表がされました。暖冬というだけで即雪が少ないと判断するのは多少乱暴ですが、さてさて、今年の雪の量はいかがなものでしょうか。

山荘の中に入っていきます「あれ〜、雪まだですよ(笑)」という定番のジョークを交えて挨拶します。
で、これまた定番の西穂ラーメンを注文します。今回もこのラーメンのために麓で食事をせずに登ってきました。変わらぬ美味しさに大満足です。
その後はチビチビと酒を飲みながら過ごします。





08時15分
翌朝です。06時頃まで雨が降っており確実に回復が遅れていると感じます。なので出発を遅くして目的地は独標に設定します。登っているうちにガスが抜けてくるだろうという甘い予想をしていました。
そう、全く考えが「甘かった」のでした・・・





08時17分
稜線に上がる途中に別棟があります。夏季は診療所のスタッフが常駐していますがこの時期は閉鎖されひっそりと静まりかえっています。





08時20分
意外に山荘裏手の登りが急だったりします。朝一番で意気込んで急いで登ると息が上がって苦しくなってしまいます。ここは無理しないでゆっくり上がるのがよろしいかと思います。ま、人それぞれですからね。





08時33分
丸山登頂。
何も見えません。

以上





08時42分
丸山を過ぎ、長い斜面をひたすら登っていきます。これはまだ視界があるほうです。これがもっと霧が濃くなり積雪で地面が白いと、本当に足元しか見えなくなります。
次来るときはもう雪の上を歩くようになるでしょうか? 地面の上を歩くのは最後かもしれませんね。とか言って次回は「予想に反して雪がありませんでした〜」とか書いていそう。さて実際はどうかな?





08時52分
基本的にはガレていますが、よく足元を見て歩けば問題なく行き来できます。
空を見上げると青空が出ている部分があります。なので基本的に天気は晴れており稜線に雲がかかっている状態だということがわかります。
ということは湿った空気が上昇しているのか? など、いろいろ考えながら登ります。こういう天気でも学べることはたくさんありますね。





08時57分
しばらく登ると少し広い場所が現れます。
休憩にはちょうど良い場所なのですが、ここはヘリポートにもなるようです。
登山道整備のための資材を降ろすためのスペースだそうです。確かにこの先は岩の崩落を防ぐための木材が設置されています。登山道の整備も大変ですね。お陰様で我々登山者は安心して登ることができるわけです。





09時04分
さて、いつまで経っても霧が晴れてきません。まあ、雨が降っていないだけましかなと言ったところですが、好天を期待していただけに残念な気分です。山の天気は難しいですね。
風は思っていたよりも強くありません。もちろん稜線上の場所によって違うのですが今日は全般的に風速は弱いです。





09時17分
周囲が明るくなり太陽がぼんやりと見えてきました。
ここでやっと視界が開けるか、と思ったのもつかの間、再び霧が濃くなり視界がなくなってしまいました。
さて、登山道もここまで来ると徐々に岩峰地帯へ姿を変えていきます。ここから先は誤ってルートを外すと谷へ滑落する可能性が出てくる場所になりますので、気を引き締めて慎重に進んでいきます。





09時24分
少し前に積雪した登山道も、今日は雪のカケラさえありません。
この部分は第12峰を巻いているのですが、積雪期は峰の上を越えていくのでこの部分は通りません。

西穂高岳の稜線は積雪の有無(および積雪の状態)でルートが異なる箇所があります。最近、確実に冬ルートで行った方が安全だという状況でも、夏ルートにトレースがついていることが多いと感じています。一度トレースが付くと知らない人は皆それが正しいルートだと思いますので、「何で、皆こっちへ行っているの?」と疑問に思うことが度々あります。雪庇の上にトレースが残っていたこともあり、想像しただけでも身震いしたこともあります。
冬山はその時のコンディションによって適切なルートファインディングができなければなりません。





09時26分
独標直下まで来ました。
ここから見ると岩の城塞のようなイメージがあります。独標といえど穂高の稜線ですから技術が必要です。登る時よりも降りる時の方が緊張感があります。
少し余裕がある場合は、最後の鎖が取り付けられている下の辺りに松本深志高校落雷事故の慰霊碑が設置されていますので注目してください。当時は雷発生のメカニズムが解明されておらず惨事になりました。





09時31分
独標最後の岩壁です。ここを登れば登頂です。
岩場はちょっとしたルート取りで楽に登れたり逆に困難になって立ち止まってしまうことがあります。一番安定したルートにマーキングがされていますので、指示通りに落ち着いて行けば難所もクリアすることができます。

積雪期はこの角度で完全に雪に覆われますのでアイゼンとピッケルを使いこなせないと上り下りはできません。





09時34分
西穂高岳独標登頂。
この時が一番ガスが抜けていたかもしれません。ですが周囲は真っ白で何も見えず。しばらく待っていましたがコンディションは一向によくなる気配がないので、頃合いを見計らって下山を開始しました。
さて、今回は雪のない冬の西穂でしたが、次回はどうでしょうか。例年だと11月末には量に差はあるものの積雪していますので期待大です。
下山時は何名かの方々とすれ違いましたが、皆口々に「予報は良かったのに・・・」と嘆いていました。山の天気の難しさですね。

さあ、やっと冬山シーズンの到来です。



2018年11月9日〜10日






当日の天気に関する考察

「晴れ時々曇り」としていた天気予報は外れたわけではありませんでした。これは次のように解析できるかもしれません。


画像出典:気象庁HP


上記の天気図は「相当温位」という特殊な数値の同じ値を線で結んだものです。数字が大きいほど空気は湿って暖かく、数字が小さいほど空気は乾燥して冷たいことを表しています。
独標に登頂した当日の相当温位の状況から考えると穂高の北西側は乾燥して冷たい空気になっており、穂高の南東側は暖かくて湿っていたことがわかります。風向きを見ると冷たく乾燥した空気が暖かく湿った空気に向けて流入しています。寒冷前線はすでに日本列島を去っていましたが、その後性質の異なる空気がぶつかり合い大気が不安定になった上、山岳特有の上昇気流により空気は一気に湿度が高くなり山岳地帯は雲に覆われたものと考えられます。








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