秋の穂高・涸沢2015(第3部)

前日降り積もった雪により出発時間をぎりぎりまで延ばしましたが、稜線に出るかそのまま涸沢経由で下山するかの選択に迫られました。
天気は今日も雲一つなく最高のコンディションです。しばらく外に出て考えてみます。





05時43分
ご来光です。
空気が澄んでいる分、綺麗に見えます。
本来の予定では奥穂高岳山頂もしくはその周辺でご来光を見る予定でしたが、昨日降った雪の関係で出発をぎりぎりまで遅らすことにしましたので、穂高岳山荘のテラスからこのご来光を眺めます。
さすがに寒いので防寒具を着込んでいます。





06時36分
決断の時がきました。

稜線に出るか涸沢経由で下山か。

写真を見るとそんに雪が付いていないように見えますが、実際あしもとには結構雪が積もっています。
他の登山者の方々を見ていると、稜線に行く方と涸沢に下山する方と両方いるようですが、若干涸沢に降りていく方が多いような気がします(といってもこの時間はまだ数組のみですが)。

稜線への取り付けに歩いていき積もった雪の状況を確認します。
雪は凍結していません。踏み込むと冬山の雪のようにザクっとめり込みます。おそらく昨日積雪してから気温がずっと低いままなので溶けることなく今現在にまで至ったのもと思われます。一度溶けた雪は一晩で凍結するわけですが、そもそも溶けていないので凍結もしていないのでしょう。

そして決断。

予定通り稜線へ出て岳沢経由で下山する。ただし時間的な関係で前穂高岳はパスする。

そうと決めたら早速出発することにします。





06時45分
最初の取り付けを登り終えたところです。
すでに何組かの方が先行しているので雪の上に踏み跡がたくさん残っています。まさに冬山の感覚ですね。
3,000m超えの高度で、いきなり岩場の直登という厳しいコースですので、いつもながらここは息が上がってしまいます。なので一歩一歩を慎重に踏み出しながら慎重に登っていきます。





06時46分
振り返ると涸沢岳が大きく見えます。昨日はガスの中に入ってしまったので登頂はしませんでしたが涸沢岳から見る景色もまた最高です。ま、次回の楽しみということで。
下の方を見ると穂高岳山荘の屋根に雪が積もっているのが見えます。冬は山荘自体が雪で埋まってしまうのですから、自然というのは恐ろしいものだと感じます。





07時18分
ただでさえ岩稜地帯ですから慎重さが求められるのですが、それに加えて積雪しているものですから、余計に慎重にならなければなりません。風も強く吹いていて時々突風に近い風も吹き付けることがあります。
テント装備一式を入れたザックはやはり重たいです。そんな重たいザックを背負って必死に登っていきます。





07時29分
奥穂高岳登頂。
いや、稜線に上がってきて正解でした。こうやって奥穂高岳の山頂に立つのはもう何度目になるのかわかりませんが、やはり山頂というのはいいものです。北アルプスでここより高いところはないわけです。
今回、山頂にはあまり人は多くありませんでした。やはり積雪のためキャンセルした人も多かったものと思われます。

あまり長い時間休憩することができませんが(すでに今の時間で本来予定していた時間から2時間近く遅れている)ので簡単に周囲を見渡してみます。





上高地の河童橋方面です。
夏に来た時は雲の下だったので何も見えませんでしたが、今日は遠くまで良く見渡せます。
今頃河童橋からは多くの人がそびえ立つ穂高連峰を見上げているんだろうな、なんて思うとちょっと優越感に浸ってしまいます。「私は今みんなが見上げているその峰のトップにいるのよ」ってな感じで。





毎度毎度のジャンダルムです。
今回登山者たちの話を聞いていてジャンダルムの話題が意外に多かったような気がしました。
ジャンダルムに登るには馬ノ背と呼ばれるナイフリッジを通過していかねければなりません。左右に切れ落ちた文字通りナイフのような鋭い稜線で、熟達した方ならともかく、あまりにも高度感があるのでまたぎながら超えていくという話も結構聞きます。
それだけでなくルートファインディング能力も試される場所でもあります。決して経験の浅い人が行くべきところではありません。
なので私はジャンダルムは見るだけ。今日のジャンダルムはうっすらと雪が付いていて、初冬を感じさせる位で立ちでした。





中央に鋭くとんがった槍ヶ岳、一番右側には北穂高岳。先ほど大きく見えていた涸沢岳はもう目下の存在になっています。
夏に縦走した北穂高岳から涸沢岳の稜線がよく見えています。
しかしまー、ここまでクリアに見えると本当に気持ちいいものですね。夏に来た時は雲海がすごく、それはそれで良かったのですがこの見晴らしの良さというのはやはり山の醍醐味ですよね。
でも意外に寒いし風が強いので停滞している時は着込まないとつらいです。





焼岳と乗鞍岳です。
冬には真っ白な姿になる峰々。今日はまだ雪の姿はありません。もしかして雪が降ったのって穂高の山域だけなのかな、なんて思ったりします。





07時46分
さあ、前穂高岳に続く稜線(吊尾根)を歩き始めます。
ここは正直な話、雪はないかと思っていたのですが、バッチリ積雪しています。もちろん凍結はしていないので引き返すということはないのですが、吊尾根というのは意外に岩場なので慎重にいかねばなりません。
吊尾根から見える景色がまた素晴らしいです。今日は雲海もなく全てが見渡せるので気持ちがいいです。





08時00分
吊尾根の中でも一番と言っていいほど緊張感があるところです。2本の長い鎖が上と下に付いていて、鎖と鎖の間は三点確保で降りていかねばなりません。意外にこの鎖がない部分がいつ来ても緊張感があってドキドキしてしまいます。

先行者が降りているのでしばらく待機します。先行者が鎖を使って降りている時は、完全に降りて鎖を手放すまで待っていなければなりません。これがルールです。気が利く方なら「降りましたよ〜、どうぞ〜」って声かけてくれます。
先行者2名が完全に降りたのを確認できましたので、私も鎖を使って降りていくことにします。





08時33分
進むにつれ前穂高岳がだんだん大きくなってきます。
少し暑くなってきたので上に着ていたシェルジャケットを脱いでしまいます。山ではこまめな服装管理が大切です。特にこの時期は行動している時と停滞している時の差が非常に激しいので常に服を出し入れする印象がありますが、それでいいのです。無理すると本当に風邪ひいてしまいますから・・・





08時33分
西穂高岳の稜線が見てます。冬のステージです。はい、以前にも同じこと書きましたね(´∀`*)
次回は冬山登山として穂高連峰に来る予定ですので、西穂高岳へステージが移ります。なので今見える西穂高岳の稜線から、今いる吊尾根をカメラに収めることになるでしょう。
冬山登山、楽しみです。昨シーズンは一度も行けなかったので今シーズンは絶対に行くぞと誓いながら先へ進みます。





08時40分
さて、今度は反対側になる涸沢方面を見てみます。これまた圧巻の景色ですね。昨日の朝は涸沢から眺めていたのですが、逆に吊尾根から涸沢を見下ろします。こうやってみるとやはり紅葉している木々はあるものの、かなりの割合で葉っぱが落ちてしまっているなという印象があります。
ま、そんな年もあってもいいかもしれませね。来年はどうでしょうか。





09時27分
紀美子平に到着。
実は結構お腹空いていて早く弁当食べたいという気持ちでいっぱいでした。吊尾根ってなかなか腰下ろして弁当食べるというようなスペースがないんですよね。なら、頑張って紀美子平まで行ってしまおうということになるわけです。
この時間でしたので、人は多めだったのですが皆すぐにザックをデポして前穂高岳に登って行ってしまいました。誰もいなくなった紀美子平で弁当をゆっくり食べることにします。





09時31分
これが穂高岳山荘名物朴葉寿司です。これがすごく美味して意外に腹持ちがいいんですね。
いつも写真に撮ろうと思っていたのですが、気付いたら食べ始めていて写真に撮れるような状態ではなかったのですが、今日はちゃんと食べ始める前に写真に収めました。
絶景を見ながらのお弁当は最高です。





これが弁当食べながら見ていた景色です。う〜ん、これだけでもおかずになりますね!
今日は多少無理してでも稜線に来て良かったです。素晴らしい秋晴れ。これ以上ない天気です。思えば春に来た時も夏に来た時もあまり天候に恵まれなかったので、今回の秋の穂高はリベンジと言ってもいいくらいです。

さて、食後少しの休憩をしたら重太郎新道を下山していくことになります。
ここも岩場の危険な箇所が多いので気を引き締めて下っていきます。





10時11分
下山を開始して最初に到着するのが雷鳥広場です。
今回は雷鳥の姿は目撃できませんでした。なんでも天気の悪い時に活動するようです。
見晴らしもいいので下から登ってきた場合にはいい休憩ポイントになるかもしれませんね。





10時22分
ここは以前、このような階段はなくザレた急坂を慎重に下っていくという難所でした。私も何度かズルって行ってしまった記憶があり、嫌なところだなという印象があったのですが、夏に来た時にこのように整備されていたのでだいぶ気が楽になったような気がします。
登山道の整備を行ってくださる方には本当に感謝にたえません。穂高の稜線を歩いていると「どうやって鎖とか取り付けたんだろう」って思うくらいの難所が出てきますが、やはりプロの仕事っていうのはすごいですね。





10時42分
岳沢パノラマです。
先ほどと比べてだいぶ高度が下がってきましたがやはり絶景です。
だいぶ疲れたし誰もいないので、ここでザックを降ろし少し休憩します。登りも疲れますが、下りも意外に疲れるんですね。さすがにここら辺は雪はないですが、疲労も出ているし下りの方が滑ったりした時の被害が大きいので精神的にも苦労が多いです。

この岳沢パノラマを過ぎてしばらく降りると森林限界地点を割り込み林の中へ入っていきます。
それでも基本岩場を下りていく感じなので慎重に下りていきます。





11時15分
カモシカの立場に到着。
ここまで降りてくれば岳沢小屋はもう直ぐです。
ここでものすごいスピードで降りてきた女子二人組に先へ行ってもらいます。若いっていうのはいいものですね。夏に来た時も岳沢小屋から3時間かからないで紀美子平まで登ってきたというツワモノ女子がいましたが、こう言った元気な方々のお姿を拝見するだけで、こちらも元気をおすそ分けいただいた気分になります。
さて、年寄りはゆっくりと出発することにします(笑)





12時13分
岳沢小屋到着。
想像していたよりも早く到着できました。
さあ、後は上高地までひたすら延々と歩いていくだけです。そう、意外にここから上高地までが長いんですよね。地図をご覧いただければわかると思います。ここから先は特に危険な箇所はありませんので、ヘルメットを外し、トレッキングポールを取り出して楽をすることにします。そして延々と上高地に向かって岳沢を歩いていきます。

今年は秋の穂高・涸沢を楽しむことができました。
紅葉はピークを過ぎていて落葉した木々が多かったのですが、総合的にはまずまずのコンディションだったでしょうか。
何よりも2日目の午後に雪が降って積もったのが一番の誤算でした。ただし積雪については「10月に入れば積雪もある」と山荘のHP等で注意されていましたから、改めて山の現実を思い知ったというのが正しいかもしれません。

こうしてブログを書いている今も穂高連峰では雪が降っているという情報が入ってきています。もう、すっかり山は冬に近づいているんだなと思います。次回は11月後半を目処に今シーズン初の冬山登山をする計画でいます。今シーズンの雪の状況はどうでしょうか。また真っ白な世界を期待して止みません。

ここまで読んでいただきありがとうございました。






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