冬の西穂2018年3月17日



今シーズンラストの冬の西穂になってしまいました。
天候に恵まれず、3月に入ってからは雪も減ってしまい、今シーズンは西穂高岳登頂ならずかと思っていたのですが、最後の最後で見事登頂することができました。





17時49分
入山時は天候は悪く(それでも予想していたよりは荒れていなかった)、西穂山荘に到着して早々にくつろぎます。今日は本館解放まではいかないのですが、それでも宿泊者は多いようです。
この時間は部屋で仮眠していたのですが、どこからとなく「外真っ赤だよ!」という声が聞こえてきたので窓から外を見てビックリ! 美しい夕日になっているではありませんか。
すぐに外に出て白山右に沈んで行く夕日を写真に収めます。
いや〜、この夕日は良い意味で想定外でした。まさに前夜祭とでもいうべき自然の脅威です。





07時15分
翌朝は予想通り雲ひとつない青空。
最初は体を慣らすためゆっくり登っていきます。昨日はだいぶ降雪があったと思われ、パウダーが乗っています。今日はすでに何組もの登山者が先行しているので安心です。ともあれ独標から先へ行く人はどれだけいることか。それでも見上げるとすでにピラミッドピーク付近を登っている人が確認できるので、少なくともトレースメーカーにならずに済みそうです。
焼岳と乗鞍岳が美しいです。この時間風はあまりないです。時々吹き付けて来る風がかえって涼しくて気持ちが良いです。ただ9時過ぎくらいから風が強くなり、ガスに覆われる瞬間もありました。





07時18分
丸山到着。
今日も風はあまりなく安定しています。もう春の雰囲気になっていますね。厳冬期の荒れた稜線が懐かしいです。
先ほども書きましたが昨日の宿泊者が一斉に独標をめがけて登っていきます。私は07時発と決めていたのですが、かなり早いタイミングで登られた方が数名いたようです。





07時31分
丸山を過ぎてお花畑を登って行く時点で完璧なステップが出来上がっていました。春の涸沢あずき沢状態ですね。おかげさまでだいぶ楽して登ることができます。
時間が早いのでまだ雪が崩れることはありません。それでも気温が高く、今日は入山者も多いようですので確実に雪の状態は悪くなるものと思われます。





08時03分
独標が見えてきました。
宿泊者の人数に対して考えると独標にいる登山者は若干少ないような気がします。ということは割と多くの方が独標から先にいかれているのかもしれません。もしかしたら前回と違ってトレースが期待できるということですね。

もちろんトレースが全て正しいというわけではありません。第5峰では巻いていくルートにトレースがなく、皆苦労して峰本体に取り付いていたので教えて差し上げました。第2峰も峰を登って行くルートにトレースがありました。下山時に参考程度に峰を登るルートを取りましたが今回の状況では雪が少なくて岩が露出しており浮いている岩も多く大変危険な状況でした。





08時19分
独標登頂。
今日も麓は雲海が出ています。遠くには白山も見えていてコンディションとしては最高です。やはり3月にもなると天候が安定してくるのですね。
さて、独標から始まる岩峰地帯。ここがスタートラインです。独標から山頂まで1.5Hが目標です。もちろん雪のコンディションによってだいぶ違ってきますが今日はどうでしょうか。
息が落ち着いてきたところで独標から先へ進みます。





08時24分
第10峰に向けて登り返します。前回きたときより新たに降雪していますが、総合的な雪の量は少ないため例年に比べて岩の露出が多いです。この時期にもなると融雪するスピードも早まりますから降ったとしても全体量は変わらないようです。記録的な豪雪にでもなれば別かもしれませんがこの時期にそれはもうないでしょうね。





08時28分
第10峰登頂。
よく奥の×印の方から降りようとした足跡が残っているのですが、さすが今回は無駄な努力をした人はいなかったようです。
第10峰から山頂側に降りるルートは高低差は少ないですがほぼ垂直に降りることになり慣れていないと恐怖感があります。実際はホールドできる岩が沢山ありルート取りを間違えなければ普通におりれます。
今日は雪が少なくピッケルをさせる場所がありませんでしたが、その分ホールドできる岩が沢山露出していて良くも悪くも安定して上り下りできました。





08時30分
次の第9峰はこの稜線の中でもかなり緊張感がある場所です。全体的に雪庇が張り出すのですがとりわけコルの部分は本来痩せ尾根の部分に雪庇が成長しますから、こういう状態を見極められなければなりませんね。
一部で岩の上を歩く場所があり細心の注意を払います。





08時38分
第9峰を超えると次のピラミッドピークに向けてトラバースが始まります。先行者のおかげでトレースが付いており安定して進んでいけます。ああ、トレースがあるというのは何と楽なのでしょう。
新雪のパウダーという不安定な要素も複数の登山者のトレースによりだいぶ難易度が異なってきます。





08時43分
ピラミッドピーク直下の雪壁です。
こうやって写真で見るとそんなに難所には見えませんが、実際は高低差もあり雪のコンディションによっては苦労する場所です。
今日は写真のようにステップが刻んであり雪の崩れもないので大変楽に上がらせていただきました。ピラミッドピークはその名の通り頂上に近づくにつれて露出感が出ますので登っている途中は周囲を見て圧倒されないよう注意します。
積雪はしているものの、その下の層の雪が少ないためアイゼンの刃が下の岩まで届いてしまうことが度々あります。下山の際は特に刃が見えない岩に引っかかりバランスを崩して何度もヒヤリとさせられました。





08時52分
ピラミッドピーク登頂。
本来は道標が立っている部分が一番高いところです。この雪の盛り上がり方が半端ないです。ここまで雪が盛り上がっているのはあまり目にすることはありません。
写真ではわかりませんが、ここから見ると7、8名の登山者が目視できます。結構な人数が先行していたのですね。とりわけ苦労している様子もないので一安心します。





08時58分
次の第7峰は振り返って眺めると良く分かるのですが、ピラミッドを縦に真二つに切ったような形をしています。ピラミッドピークに比べるとさらに斜度は増していて高度感もあり登頂が一層困難になっています。
第7峰の山頂側斜面が降雪直後の不安定で降りるのに苦労します。この部分は雪の状態によってルート取りも異なってくるのですが、今日は正規に近いルートでトレースが残されていましたのでしっかりと活用させていただきます。





09時04分
第6峰到着。
第6峰はおそらくこの稜線の中で一番簡単に登れる峰だと思います。ただここまで来るのに大変な思いをしなければなりませんから、何れにせよ第6峰に立つというのは大変なことです。
さて、ここでちょうど中間地点になります。ここから先も気を抜けません。





09時05分
たぬき岩です。
第5峰からのびる尾根の先にあるこの岩は、言われて見ると本当に新楽焼のたぬきにそっくりです。日本酒でもかけてあげたいです。
このたぬき岩に元気をもらって登っていきますし、下山時はたぬき岩が見えると「ここから先も安全第一で戻ろう」という気持ちになります(本当か?)

ま、いずれにせよたぬき岩が見えてきたということは西穂の稜線の後半部分に突入したということでもありますので、気を引き締めて登っていきます。





09時05分
第5峰です。
この峰は左側から巻いて行くのが普通です。
ただ、なぜか最近この第5峰を巻かずに直登する登山者が多いように感じます。しかも今日は巻いて行くルートにトレースがなかったため後続する登山者は皆第5峰を直登したものと思われます。写真に写っている3人パティーも直登しようと一所懸命格闘していたので、巻いて行くルートの方が簡単だと説明します。
巻いて行くルートはうっすらですが古いトレースが残っていて難なくクリアすることができました。





09時13分
チャンピオンピーク(第4峰)の急登を登っていきます。
前回と比べると雪は少ないうえトレースもついているのですが、基本的にパウダーが乗っているのは変わりませんし根本的に積雪量が少ないのでアイゼンの刃が下の岩まで到達する場所が多く、気をつけないと岩に引っ掛けてバランスを崩してしまうので神経を使います。





09時20分
チャンピオンピーク(第4峰)登頂。
独標から第5峰までが一気に見渡せる場所です。このピークはゆっくり休める場所がありませんので景色は良いですが足早に次の峰に向けて進んで行くことにします。





09時23分
第3峰到着。
ここもコンディションによってルートを使い分ける場所ですが、今日は一部峰の上を通るルートにトレースがありました。特に問題はありませんでしたので上り下りともにトレースを利用させていただきました。
この第3峰というのが意外に面倒なような気がします。第9峰や10峰に匹敵する技術が必要だと思っています。加えて適切なルートファインディングが必須ですね。





09時33分
第2峰直下まで来ました。
ここでトレースは3方に分かれています。直接第2峰に登っているトレース、しばらくトラバースして途中から第2峰に上がっていくトレース、第2峰をトラバースして完全に巻いていくトレース。一番奇跡が多いのは途中から第2峰に上がって行くトレースです。

こういう場面こそルートファインディングが求められます。雪が少ないので峰の上に上がっても安全性はさほど変わらないことや、雪の崩れはないことなどから第2峰をトラバースして巻いていくルートを選択します。1、2名程度のトレースしかないのでキックステップしながら横歩きしなければなりませんが、斜面は思っていた以上に寝ているので難なくクリアできました。
ちなみに下山時は参考程度に第2峰を登るルートにしましたが、予想通り雪が少なく岩が露出していてアイゼン・ピッケルを装備している状況では逆に困難でした。やはりトラバースして巻いて行くルートが今の状況では正解でした。





09時44分
さあ、残すは主峰のみです。
さて、主峰直下までのルートは夏ルートにトレースが残されていました。
どうしようか迷ったのですが、ここまではっきりしたトレースが残っている以上、新たに冬ルートにトレースを切り開くよりは今あるトレースを辿った方が楽だと思いましたので夏ルートを利用します。ここは今回唯一心残りだった部分です。やっぱり冬ルートで登るべきだったかな・・・ 丁度下山してきた方とそんな会話をします。





09時50分
そしてついに山頂直下です。
すれ違う方と情報交換した結果、蹴り込めば問題なく上がれるし、少し大変だが前向きにも降りれるレベルだと聞いています。

実際に取り掛かります。確かに雪はあまり締まっておらずピッケルもピックは役に立たずシャフトを突き刺さなければなりません。それでもステップは出来上がっているし蹴り込めばしっかりと止まるので難易度はそう高くありません。
さあ、あともう少しです。





09時58分
西穂高岳登頂。
シーズンの一番最後のアタックでやっと登頂できました。
今シーズンは日程と気象条件が合わずもしかしたら登頂ならずかと危惧していましたが、最後の最後で成し遂げました。今シーズンはこんなにも頂上が遠かったとは。

しばらく眺めを味わっていると、後続の登山者が上がってきました。
簡単な会話をしてから山頂をお譲りします。

独標まで下り、さらに下りて行くと、今日はたくさんの登山者が上がってきています。皆笑顔です。西穂山荘やテント場は大変な賑わいを見せていました。今日は事前予約だけでも100名近い宿泊者だとか。山荘で休憩し、常務やスタッフの皆様にシーズン中お世話になったお礼をして下山していきます。

ロープウェイに向かう途中でもたくさんの登山者とすれ違いました。今日は一体どれだけの登山者が山に入っているのだろうと思いました。
冬の西穂は来シーズンになるまでお休みになります。

では最後に頂上からの眺めをどうぞ。


一番右がジャンダルム、左へ涸沢岳、南岳、中岳、大喰岳そして槍ヶ岳







奥穂高岳から前穂高岳に続く吊尾根







霞沢岳と目下に上高地







乗鞍岳、焼岳、そして今まで歩いてきた稜線







遠方に白山







笠ヶ岳もこの標高から見ると何か違って見える







明神岳越しに八ヶ岳





2018年3月16日〜17日







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