冬の西穂2018年2月24日


今シーズンの冬の西穂は年が変わってから条件に恵まれず、2回連続で中止になりました。事実上の登山口となる新穂高ロープウェイが強風により運行停止となり入山不可となったことや、仮に入山できたとしても歩けるような状況ではなかったことなどがあります。
今回は3度目の正直ということで、4名のグループで入山しました。厳冬期らしさを感じた気象条件でしたが、時々のぞかせる晴れ間や撤退の決断をするタイミングなど非常に有用な山行だったと思います。





10時45分
登山道入り口にある小屋はここまで雪に埋もれてしまいました。しばらく来なかったこともあり、随分と積雪量が増えたように感じます。小屋が雪ですっぽり覆われると、そろそろシーズンも終盤に差し掛かってくるイメージがあります。
天気は下り坂であることはわかっていますので、なるべくなら今日のうちに登りたいという計画で進んで行きます。






11時00分
さて、おぼろげではありますが稜線が見えてきました。ガスが上がってきているようでカメラを構えた次の瞬間にまた見えなくなってしまうという山では定番の現象が起きています。
それでも上空の高いところは晴れているので、霧が晴れれば期待ができるかな?という希望を抱きながら登ることにします。





11時06分
今回の樹林帯の雪質ですが、しっかりと固まっていてとても歩きやすい状態でした。やはり春を実感させる状態で、ワカンを履いて登った前回とはまるで様子が異なります。雪質によってこんなにも違うんだということを改めて実感させられます。






11時27分
この部分は積雪量が多くなりシーズンがだいぶ進んだ頃冬道に切り替わるのですが、安定してきました。前回は切り替わった当日に歩いたので十分に踏み固められておらず少し苦戦したのですが今回は安定していて楽でした。
それでもこの部分は山荘直下の急登が始まる部分ですから、山荘までの行程の中では一番キツくなる場所です。わかっているので気持ちは楽です。ゆっくりと一歩ずつ確実に上がって行きます。





11時47分
西穂山荘到着。
確かに前回来てから1ヶ月以上経っているのですが、それ以上に長い期間ご無沙汰しているような気がします。
風紋がはっきりとできているのを見ると激しい暴風雪に晒されたのだなというのが時間を超えて伝わって来ます。

さて、時間もちょうどお昼時なので小屋に入って昼食を食べることにします。受付をして、今日宿泊する部屋を確認しておきます。
今回は初日の早い時間が勝負だと見込んでいますので、昼食後すぐに稜線に取り付くことにします。





12時39分
さて、食事休憩を終えて外に出て準備をします。
やはり高高度は快晴ですが局地的な上昇気流によるガスの発生により完璧な青空は期待できなさそうです。それでも雲の合間から見える青空に期待を寄せながら稜線に上がることにします。






12時47分
ほぼ無風だった樹林帯と比べると稜線は風を遮るものがないため、ダイレクトに吹き付けます。
それでも今日は2月にしては風は穏やかで普通に歩いていけます。予報では明日は風が強くなるようですがどうなるか。
いつものことですが、山荘の裏手の丘が意外にキツく感じます。特に朝一番の場合は無理して急いで登るとすぐに息が上がってしまい、その後が大変になってしまいます。ですが、この丘を登りきった後に見えてくる稜線の姿に圧倒されるんですね。

さて、今日の稜線はどんな姿でしょうか・・・





12時54分
今日も西穂の稜線は雄大な姿を見せてくれました。
ちょうどガスが抜けて美しい姿を収めることができました。
稜線は想定よりも雪の量が少ないように感じます。降雪そのものは厳冬期ですから頻繁にあるのは樹林帯の積雪を見ればわかりますが、稜線は風が強すぎて飛ばされてしまうのであまり積もらないというのがこの時期の特徴です。ただ今シーズンは特にそれが強いような気がします。
明らかに陽が高くなっているのを感じます。照り返しが強烈です。たまらず途中でサングラスをかけました。





12時58分
丸山まで来ました。
この瞬間は後ろの笠ヶ岳は見えませんでしたが、その瞬間で綺麗に見えるタイミングがあり山の気象条件の難しさを実感します。
晴れていれば丸山からは笠ヶ岳、乗鞍岳、遠くに白山、反対を向けば八ヶ岳など名だたる山々を見渡すことができます。山荘まで登れる体力があればもう一歩頑張って丸山からの絶景を楽しめるでしょう。私もいつまでこの光景を眺められることか。





13時07分
丸山から先は延々と続く登りになります。
この部分は特に雪の多い少ないが顕著に現れる部分でもあります。比較的雪が多いシーズンは写真で見えている岩は全て雪の下になり、真っ白な稜線になります。
そうは言ってもまだ2月なのでこれから雪が着いてくるのかもしれませんが、今シーズンは雪が多いとは思いません。





13時13分
まるで板のように雪が積もっています。
一体どうすればこういう形になるのかわかりませんが、雪と風が織り成す芸術はきつい斜面を登る登山者にささやかな安らぎを与えてくれます。





13時26分
この部分も積雪量がダイレクトに現れてくる部分です。
この部分だけ見れば11月後半〜12月前半ごろの様子とあまり変わりません。やっぱり全部飛んで行ってしまうのでしょうね。
この近辺まで来ると独標が目の前に見えるようになるので後どれくらいかというのが目で見えるようになります。





13時49分
独標に近づいて来ました。
こうやって見ると普通に登れそうで「どうしてあんなに手こずっているんだろう」などと思いがちですが、とんでもない、実際に独標に取り付いてみると見た目以上の高度感や斜度に圧倒されます。特に独標を下りる時は怖くで進めなくなる人が多いです。
見ていると独標直下の雪質は安定しているように見えます。さて、実際はどうでしょうか。





13時51分
独標直下まで来て見上げます。
前回は真っ白に凍り付いていて、まるで氷の要塞のようになっていた独標も今回は黒々とした岩肌が際立っています。今日はきちんと岩をホールドすることができそうです。それだけでも精神的にだいぶ楽になります。
最後の信州側斜面もアイゼンやピッケルが十分に機能する状態で、軽くステップもできており雪のコンディションによってここまで違うのだということを実感しました。
さあ、後一踏ん張りです。





14時00分
西穂高岳独標登頂。
初登りは独標手前約10mで撤退したので、今回が正真正銘の初登頂となるでしょうか。
麓までよく見えているし、厳冬期らしい鉛色の空になっています。





乗鞍岳や焼岳がよく見えています。
日の光が入っていて幻想的な雰囲気にもなっています。こういう眺めもまた良いものです。晴天の冬山はもちろん絵になりますが、時にはこういう神秘的な姿も良いものです。
むしろ最近は逆に完璧ではないリアルな山の姿の方が魅力を感じてしまいます。





霞沢岳の方面が見えています。
名前の通り少し霞んでいていつもより遠くにあるように見えます。
霞沢岳も一度登ってみようかなと思っています。徳本小屋も新しくなったことだし。
ただ、時間配分が難しくて色々プランニングをしたのですが上高地を正午前に出発するのが良さそうな気がします。





左のピークはピラミッドピーク(8峰)、その右隣は重なっているので判別しにくいですが下がチャンピオンピーク(4峰)、上に白くそびえているのが西穂高岳(主峰)、その右が間ノ岳、一番右にわずかに天狗ノ頭が見えています。






そうこうしているうちに笠ヶ岳が見えて来ました。
綺麗に真っ白になっていますね。ちょっとした瞬間で見える景色が全く異なって来るのは山ならではです。





06時35分
翌朝は綺麗なご来光という訳ではありませんでしたが朝日が散乱していて、それはそれで興味深い絵を撮ることができました。
予報では風が強かったので暴風による体感温度低下に備えます。





07時19分
昨日にも増して幻想的な光景になっています。
そして稜線の風は予想通り強烈になっています。こうなると風に足を取られないよう、普段よりも使う筋力や体力が増すので自分との闘いになります。
多少の強弱はあるものの絶えず吹き続ける風に苦労します。

さて、強風は吹き続けるものの予定通り独標に向かって登っていきます。
しかしながら登れば登るほどコンディションは悪化して行きました。独標手前ではついに吹雪になり山荘方面は視界が悪くなり始めていました。風速は瞬間的に20m/sほどになっていたでしょうか。
少し危険なものを感じたので、先行して独標に登頂していたパーティに直ちに下山するようジェスチャーで促しました。

吹雪は想定外でした。安全を優先し皆で下山して行きます。
これも厳冬期の冬山のルールですね。




2018年2月23日〜24日






後日、実況天気図を確認したら発達中の日本海低気圧が接近していたことがわかりました。入山日に確認した天気図とはまるで違った気圧配置になっていてびっくりしました。
冬山では予報天気図だけでなく、実際の空模様などあらゆる方面に触覚を伸ばして予測していかなければならないという厳しい教訓を穂高の山から教えてもらいました。


出典:気象庁










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