冬の西穂(2018年1月13日)


2018年の初登りはやはり穂高から始まります。
ここ穂高の山域では連日降り続いた雪の影響で登山道の状況が心配されていたところです。6年前の半日ラッセルし続けた記憶が蘇ってきます。
今回は同様の状況であれば途中で撤退することを条件に登山を決行しました。
結果的には膝下程度の積雪、稜線はアイゼンの方が効果がある状況でした。ただし独標の最後の直登がパウダーが厚く重なっており、自分の技術の限界を超えた状況でしたので、残り10m程度でしたが撤退してきました。





11時34分
ロープウェイの山頂駅(新穂高口駅)に到着しました。もっと天候が崩れるかと思っていたのですが、上空には青空も見えており薄日も射していて思った以上に天候は良く一安心します。ロープウェイ駅を出たところにある簡単な散策地である「千石園地」の様子を見ますが、直感で極端な積雪はないのではないかと思い、とりあえずワカンなしで進んでみることにします。





11時38分
前回と比べると積雪量は確実に増えました。
写真のこの場所は千石園地の外ですので、本来なら観光客は踏み入れない場所ですが最近は興味本位でここまで観光客が来ることが多いです。なので本当の登山道の状況はここから先の様子を確認しないといけません。
この先からしばらく進みます。まず安心したのは見た目でトレースが付いているということ。なのでいつかのように胸近くまでのラッセルになることはないということでした。それでも膝下くらいは沈んでしまうので、やはりワカンを装備します。





12時11分
時々日が差してきて木に着雪した雪が美しく輝いています。
写真の場所は本来ならバックに西穂の稜線が雄大に見えるのですが、今日はごくうっすらと見える程度でした。
今日はワカンを装備しなければいけない状態ですので進みがいつもより遅いです。それでもこういう機会は今まであまりなかったので、また一つ経験値が上がることを嬉しく感じます。





13時06分
山荘への最後の直登が始まる部分が右手に登って行くルートに付け替えられていました。このルートに付け変わると「本格的な積雪シーズンになったな」と感じます。このルートになると、写真の時点から最後の直登が始まることになります。
ここは地図を見る山荘直前の等高線が混み合う場所で、位置的には山荘はすぐそこです。なので焦らずゆっくり登って行くといいと思います。





13時16分
今日は木という木が全て白く凍り付いています。まるでファンタジーの世界ですね。
そういえば魔女によって全てが凍らされた街、ドラゴンクエスト6でそんな場面がありましたね。ま、そんなことはどうでも良いのですが吹雪いた直後の樹林帯はこういった美しい光景を見せてくれます。今日は強烈な寒気が列島を覆っていて、ここ西穂の稜線も文字通り凍りつくような寒さです。なので美しさが一層際立っています。





13時20分
それにしても綺麗です。白の芸術です。
気がついたら足元は踏み固められたトレースの上に軽いパウダーが乗っている状態でワカン外してもいいかなという状況でしたが、せっかくなのでそのまま履いた状態で登ります。
さて、ルートは写真の場所から少し進むと右手に曲がって行きます。斜面に対して並行に歩くようになるので斜度が緩くなります。こうなると山荘は目と鼻の先です。





13時34分
西穂山荘到着。
これまた山荘の外側は凍り付いています。でも中は暖かくてホカホカです。
出発から2時間経っていました。ラッセルに近い状態だったので、さすがにいつものペースでくるのは難しかったです。
そして、今日の宿泊者は私のみ。今季二度目の貸切状態です。
早速、恒例の雪見酒を始めます。





15時05分
しばらくすると雲が抜けてきました。日が射すようになり真っ白に化粧をした木々が美しく輝いています。もうこれだけでも酒の肴になりますね。おつまみも用意していたのですが結局景色見ながら呑んでいたのであまり手をつけなかったです。





15時06分
もしかしたら今がチャンスなのかもしれませんが、この時間だしだいぶ日本酒もすすんでいるので今日は綺麗な景色を見上げるだけにしておきます。雪だるまもいつもより輝いて見えるのは気のせいでしょうか??





16時20分
少し微妙ですがサンピーラーが見えています。カッコイイですね。
こういう自然がもたらす変化を目の当たりにできるというのも登山の醍醐味ですね。





16時50分
残念ながら雲が出ていて沈んで行く夕日は見れませんでしたが、ここまで雲が抜けるとは思っていませんでしたので上出来です。
夕食をいただき、食後もまったりとした時間を過ごします。前回は年末で大賑わい。今回はうって変わって貸切状態、気づけば外は小雪が巻い始めている。環境は全く違いますが、どちらも楽しいです。





08時04分
翌朝です。ご来光も望めず朝はゆっくりします。
稜線の状況が全く不透明ですので今日は「可能な場所まで行く」ことにします。もしかしたらラッセルで丸山で引き返すかもしれません。逆に山頂まで行けてしまうかもしれません。
さて、どうでしょうか。





08時07分
毎度のことですが、山荘裏手(夏季診療所脇)の部分は吹き溜まりになりラッセルになります。
今回もかろうじてトレース跡が残っている状態で腰上のラッセルでした。わかっていることなので、焦らずにゆっくりとすすんで行きます。





08時17分
吹雪というのは時には芸術を作り出すものです。
こうやって岩についた雪を見るとまるで風が見えてくるようです。まるで生きているかのようです、いや自ら生きようとしているのか。
日がたつと消えてしまいますのでこういう姿を目撃する機会はあまりないかもしれません。天候が良くなくても穂高の峰々は楽しみを与えてくれます。





08時20分
西穂高岳の稜線が白いです。なんだか遥かかなたにそびえ立つ未踏の霊峰のような姿になっています。
まさに「山荘から上貸切状態」ですが、この凍り付いた世界はどんな状態になっているのでしょうか。全くの不明です。
あらゆる状態を想定して登っていくことにします。






08時36分
丸山登頂。道標は着雪しています。これも自然の姿なので、あえてそのままにしておきます。
今日も風は終始吹き付けていますが、前回と比べれば全く問題ないレベルです。むしろ寒気の影響で吹き付ける風の冷たさが半端ないです。金属製の装備は全て凍りついています。iPhoenは最初から電源切っています。GPSも出発時にバッテリーを新しく入れ替えていますが最後まで持つかどうか(山荘に戻るまで持ちましたが、最後ロープウェイ手前で消耗してしまいました)。 結局最後まで機能した電子機器はデジタル一眼レフだけでした。





08時45分
どうやらこの時間、麓は日差しがあるようです。ですが上空は鉛色の厚い雲で覆われています。厳冬期の穂高はそう簡単には青空を見せてはくれません。





09時22分
海老の尻尾の張り出し方が強烈です。それだけ荒れたということでしょう。
さて、稜線のコンディションですが、丸山までは多少沈む状態、丸山から先は風で雪が飛ばされたようで、逆にアイゼンがないと辛い状態、独標に近づくとサラサラのパウダーが乗っていてアイゼンが効きにくい状態です。
場所によって雪面のコンディションが全く異なりこの時間帯の難易度は非常に高いです。





09時28分
独標に近づくにつれ視界もなくなって来ました。
ありとあらゆるものが凍りついている今日の稜線。まるで「今日は来るな」と言われているかのようです。今日は独標で戻ろうと決断し、近づいていきます。





09時43分
ここは独標の鎖手前の岩を上がって行く部分です。
完全に凍りついています。こうなると岩にマーキングされている目印も全く判別できませんので初めて来る場合はルート判別が困難です。
そして、鎖が設置されている岩を巻いて最後の直登ですが、何とラッセル状態ではないですか!
ピッケルをさしても、アイゼンを蹴り込んでも全く用をなさずそのまま崩れていってしまう状態。これがアイゼンを何度も蹴り込めば下の締まった雪の層に到達するのであればまだ良いのですが今回は蹴り込んでもダメ。これは完全に想定外です。
左側の岩をからめれば登れますが、単独行であり下りる時のリスクがあまりにも高いので、今回はここで中止します。ピークまで残り10mもない距離ですが撤退する勇気です。





10時31分
山荘まで戻って来ました。
そういえば今回は初登りでした。
登り納めも、初登りも穂高。最高です。
山荘で軽食をいただき、休憩して下山していきます。今回も勉強となることが多く実りあり登山でした。



2018年1月13日




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