冬の西穂(2015年12月)

今シーズン初となる冬山登山。実は先月も予定していたのですが、新穂高ロープウェイが強風で運休しており止むを得ずキャンセルしていました。なので、今回こそはと思い期待に胸を膨らませながら現地へ向かいました。

結果的には天候にはあまり恵まれませんでしたが、独標までは登ることができましたのでまずまずというところでしょうか。夜は山荘でクリスマスイベントを開催してとても楽しいひと時を過ごすことができました。





09時26分
今回は無事に第二ロープウェイも動いていました。
ロープウェイの4階の出口に登山届けを書くコーナーがあります。法改正により登山届の提出が義務になりました。ま、義務にならなくても万が一のために書いてはいましたが。
で、よく見ると登山届けを提出された方は「登山届届出済書」をお取りくださいって書いてあるので、もらうことにします。これは初めてですね。いつからこうなったんだろう?
届出たので一枚もらうことにします。






09時27分
早速外に出てみます。
今日はこんな感じです。
ご存知のように新穂高ロープウェイの終点は簡単な散策路があって歩くことができます。観光客の方々は雪の中を歩き回っています。そんな中私はゲイターを履いたりアイゼンを装備したりして着々と準備をしていきます。
この肌を刺すような冷たい空気が懐かしいです。冬山は2年ぶりなのでとても懐かしいです。
山頂方面は全く見えません。おそらく風が強いんだろうなと予想します。






09時42分
さて、いよいよ冬山登山の開始です。
散策路は普通のスニーカーとかでも歩けるように路面が整備されていますが、ここから先は未整備です。
写真を見てもおわかりのように積雪は結構あります。今年は雪が少なくてスキー場がオープンできないというニュースも聞きますが、ここ西穂高岳の稜線はそのような心配はなさそうです。
後で知ったのですが、ここ数日のうちに湿雪が降り稜線もだいぶ雪が付いたのだそうです。






09時47分
登山道に入ると最初は少し下り坂になり写真の開けた場所に出ます。写真の奥の方はぼんやりとしているのがお分かりになると思います。今日は視界が非常に悪いです。
ただ、山荘までは(正確に言うと丸山近辺までは)目印となる旗が立てられているので、ルートを見失うということはまずありません。
怖いのは丸山から第12峰の間の広い稜線です。特に降りてくるときに視界がないと容易にルートから外れてしまいます。今回私もルートから外れかけました(;゜0゜)





09時57分
そうこうしているうちに登りが始まります。
最初はアップダウンを繰り返しますが、最終的には本格的な登りになります。
アイゼンを履いて歩くのは今年の5月の奥穂高岳(途中で撤退したが・・・)の時以来です。久々のアイゼンの感覚に懐かしさ半分、大変さ半分で登っていきます。
今日の雪の状態だったら慣れている方ならアイゼンなしでも山荘までなら大丈夫だと思います。






10時10分
とても静かです。
そしてこの真っ白な世界がとてもいいですね。
私は登山の中でも冬山が一番好きです。真っ白な稜線と真っ青な空ももちろんいいですが、こういった雪に覆われた森の中もすごく叙情があっていいです。

ちなみに冬山のことを人に話すと、「寒いから防寒具とかたくさん着込むんでしょっ」て言われますが、動いている時は逆に暑いのであまり重ね着はしません。実際今回もベースレイヤーの上にハードシェルジャケットを着ているだけです。もちろん停滞している時は何枚も重ね着しないと大変なことになりますが、動いている時は想像以上に暑いです。






10時50分
この辺りまで登ると西穂山荘はもう少しです。
斜度もキツクなってきていてだいぶ疲れが出てくる頃です。
もう周りの景色を見ただけで後どれくらいで山荘までたどり着けるかがわかるようになってきました。時間も自分のペースだとロープウェイの終点から山荘まで1時間半かからない程度というのがわかっていますので、安心して登っていくことができます。でも疲れます(登山だから当たり前か・・・)






11時10分
西穂山荘到着。
2年ぶりの西穂山荘。いや〜久しぶり久しぶり。
西穂山荘は他の北アルプスの山小屋とは異なり通年営業しているので、冬季西穂高岳登頂の拠点とすることができます。この山荘がなければ多分私の冬山登山もなかったことでしょう。本当に感謝です。
アイゼン着脱は雪上でと書いてあるので雪上でアイゼンを外して中に入っていきます。






11時23分
そして名物「西穂ラーメン」
これがなければ始まらない!!
美味しいんです。あっという間に食べてしまいました。そして「氷結」と書いてある飲み物も飲みます。
いや〜最高のひと時です。
ちなみに画像が曇っているのはキンキンに凍りついたカメラを暖かい山小屋の中に持ち込んだのでレンズが曇ってしまうんです。そう外は氷点下10度前後の世界なんです。






12時09分
食事&休憩が終わったところで、登山の続きを開始します。
ここからは森林限界を超えた稜線になります。先ほどの森の中とは違い暴風が直に吹き付けますのでフェイスガードやゴーグルなどの重装備に切り替えます。
稜線から降りてきた方がいたので、わかってはいますが一応「風強かったですか?」と聞いてみます。暴風のようです。
さ、覚悟を決めて登っていきます。






12時30分
稜線に出るとこんな感じでした。

ほぼホワイトアウト

ですが、多少は視界が効くのとわずかではありますがトレースが残っているのとある程度地形的に把握しているのがありますので、独標までは行こうと判断します(こういった条件下での登山の継続の可否については自己責任です)。
今日は岐阜県警察の山岳救助隊の方5、6名が訓練登山できており、隊の方々が先行しているのが確認できています。目視はできませんが部分的にトレースが残っています(今日は暴風なのでトレースもすぐに消えてしまいます)。






12時33分
今日は非常に風が強いです。
ぼーっと立っていると確実に風に持っていかれます。カメラを取り出して写真を撮るのに一苦労です。
そして暴風が吹き荒れる稜線は悲しいくらい美しいです。なんていうか本当にマニアックな世界ですね。一歩を踏み出すのが大変です。なんでもない稜線なのに体力を消耗します。
たかが2、3千メートルの稜線でこんな大変なんだからエベレストみたいな高度の山で天候が荒れたら生きるか死ぬかの世界なんだというのが身にしみてわかります。






12時44分
丸山到着。
全く景色が見えません。今回はまだ写真を撮れるレベルの風だったから良かったです。何年か前の1月に来た時は写真すらまともに撮れないくらいの暴風でした。
本当ならここから笠ヶ岳の稜線が一望できるのですが今日はダメです。
ここに来るまで相当体力を消耗してしまいました。ですが本番はここからなんです。ここから一気に高度を上げていくんです。さあ、気合い入れて頑張るぞー






12時45分
そして気合い入れてこれから登る方面を見上げます。

はい、視界なし

ただ、全くのホワイトアウトではなく、雲の流れで結構先まで見えることもあるので覚悟を決めてそのまま登ることにします。

先ほども書きましたが視界が効かない時に一番危険なのがこの丸山を過ぎた部分です。
今回は降りる時にこの部分の視界がなく、うっすら残っているトレースを追って降りていたのですが途中でトレースが二手に分かれていたので、とりあえす割とはっきり残っていた右側のトレースを少し追いかけました。しばらくして少し雲が切れてちょっとだけ周囲の景色が見えたので自分が向かっている方向を確認したら全然違う方向に進んでいたことがわかりましたので急いで正規の方向に方向転換しました。
トレースと言っても大部分が消えてしまっているので、やはり視界が効かない時は遭難の危険が高くなることは間違いありません。






13時44分
苦労して稜線を登っていきます。
一瞬ですが雲が切れて稜線が見えました。本当はもう少しはっきり見えていたのですが、カメラを取り出している間にこんなにぼやけてしまいました。それだけ雲が切れるのが一瞬だということです。
それでも2年ぶりに見る西穂高岳の稜線。感無量です。






14時00分
振り返ると、これもまた一瞬ですが登ってきた稜線が見えます。
たったこれだけの眺めですが、これだけでも安心できます。
やはり雪山ブームといえどこれが厳冬期の北アルプスの現状です。それにしても一瞬ですが美しいですね。真っ白な稜線。






14時10分
さて写真に写っている岩が第12峰です。そしてここから稜線は一気に岩峰の連続となります。
この第12峰は夏ルートだと下の方をトラバースしていくのですが、雪が積もっているこの時期は峰の上を越えていきます。ただし登るときは夏ルートにトレースが付いていたので夏ルートで行きましたが、なんとなく慣れないので降りる時は冬ルートでおりました。
ただしこの第12峰は雪庇が張り出すので信州側を歩くのは禁物です。






14時15分
そしてついに来ました。独標直下。
独標に登るための最後の難関です。
厳冬期に独標から先に登るに当たって雪質は大いに影響があります。
今日は雪のコンディションは良くありません。雪はたくさんありますが締まっていないので容易に崩れてしまいます。ピッケルとかで刺してもそのまま崩れてしまう状態です。
最後は大変苦労しました。
先ほど書いた岐阜県警の山岳救助隊の方々が独標の頂上から私が登ってくる姿を見ています。心配しているのか、アイスバイルを両手に登ってくる姿が珍しいのかわかりませんが、安心感を覚えます。






14時31分
西穂高岳独標登頂
雪のコンディション、疲労度、時間などの諸要素を考慮し、今日は独標で引き返すことにします。
視界は全くありません。今まで独標に登った中では一番最低なコンディションです。
それでも今シーズンは冬山に登ることができて感謝です。






一瞬ですが、お隣の第10峰と後ろの方にうっすらとピラミッドピークが見えました。残念賞といったところでしょうか。
今日の雪のコンディションだと第10峰を降りたところから第9峰に登っていく部分がすごく難易度が高くて大変です。
ま、すでに今日は独標止まりと決めているのでいいのですが・・・

さて、下山を開始します。
県警の方々が下山を始めたので「ちょうどいいや、後ろから付いて行こう」と思ったのですが、あっという間に離されて見えなくなってしまいました。すごいですね w(゚o゚)w






15時40分
色々ありましたが何とか丸山まで下山しさらに山荘へ降りていきます。
この頃になるとだいぶ雲が抜けてきて周囲がよく見えるようになってきました。相変わらず風は強いです。体感温度で言えば氷点下15度以下とかそんな感じでしょうか。フェイスガードをしていますがそれでも顔が冷たいです。アイスバイルなど金属製のものをはじめありとあらゆるものが凍りついています。
すごい世界ですね。






15時45分
そして振り返ってみると・・・

ああ、何ということでしょう!

今日一番の眺めではないですか!!

今日初めて西穂高岳主峰が見えました。
すぐに雲の中に入ってしまいましたが、この光景を見れただけでも幸せです。
やはり白い稜線に青い空は絵になりますね。この時間なので若干夕日の赤色っぽく見えるような気がします。






15時46分
西穂山荘が見えてきました。
ホッとする瞬間です。意外に最後の下りがきつかったりします。
普段は第12峰手前までトレッキングポーツを使っていくのですが、今日は山荘から先はアイスバイルにしました。そのためか足がすごく痛いです。一晩寝たら治りましたが、この時点ではかなり辛かったです。






さて、今日はクリスマス!!
山荘ではクリスマスイベントが開催されます。
今から楽しみです。
と、その前に喉が渇いたので「氷結」という飲み物とおつまみを摂取します(これ重要(*´v`)






夕食はワイン付きのスペシャルメニュー!!
ラッキーですね〜
どれもこれも美味しくて最高です (o‘∀‘o)*:◦♪
JAZZが流れてワインを楽しみながら食事をするなんて、山小屋では考えられない贅沢です。






食後にはなんとケーキのサービスも!!
すごすぎる ヽ(≧∀≦)ノ
もちろん美味しくいただきました〜






そしてビンゴ大会のスタート!
何と何と、私1位になりました ☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
1位の人から順番に好きな商品を選べるルール。ワインも興味あったのですが、少し高山植物の勉強もしようと思って「西穂高の山100選」という本を選びました。少し勉強します!





まだまだイベントは続きます。
ライトダウンをしてアイスキャンドルを楽しんだりしました。

今回は自分が休める予定とクリスマスが偶然に重なったのでイベントに参加することができましたが、同じ山を愛する人と過ごすひと時がこんなにも楽しいものなんだと改めて感じることができました。

物資が乏しい山の中、しかもこんな厳冬期にこれだけのイベントを開催するのはとても大変なことだと思いますが山小屋の皆様の努力に本当に頭が下がります。本当に心に残る楽しい山行になりました。



翌朝は予報通り荒天でした。

県警の方々や数名の方は稜線に行かれたようですが、私はまだシーズンが始まったばかりですので無理しないで下山することにしました。
ロープウェイは無事動いていて例のごとく観光客で賑わっていました。

次回は1月後半を予定しています。
天候が良くなりますように。



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