気象予報士試験




元来、天気予報というのは気象庁しか行うことができませんでした。

しかし1993年の気象業務法改正により気象庁以外の事業者が予報をすることが可能となりました。

ところが天気予報というのは国民の生活に大きな影響を与えるものです。農家であれば種まきや収穫のタイミング、観光業であれば集客見込みやイベントの開催予定、個人のレベルで言えば今日は洗濯物干していけるかなという具合に様々なレベルで天気予報は影響を与えます。気温が1度違うだけで売り上げが数千万違ってくるという試算もあるほどです。

このことから、気象庁以外の事業者が予報をすることが可能になったものの、国民生活に与える影響を踏まえ、その水準を一定のものに保つ必要があり、ここに新たに創設された国家資格として「気象予報士」が登場することになりました。そして天気予報を行う事業者は、その予報時間に応じた人数の気象予報士の配置が義務付けられ、予報作業は気象予報士が行わなければならないと定められました。

ちなみに気象予報士が行わなければならないのは「現象の予想」つまり予報であって、それ以外、例えば原稿をテレビなどで読み上げるという行為は予報作業ではありませんから誰でも行うことができます。


気象予報士の受験資格は特定されていません。つまり誰でも受験できます。
ちなみに最年少の気象予報士は9歳と聞いています。
合格率は近年は5%近くを維持しており、国家資格の中でも相当難関であることがわかります。気象予報士の資格が創設された当時は15%以上だったと聞いていますがこれは試験のレベルが簡単だったということではなく、当初は現業の予報官が受験することが多く、受験生の平均レベルが高かったというだけで、試験のレベルは当初からほとんど変わりはないそうです。


さて、自分は山が好きで登山を趣味にしていますが、山の天気というのは時には命にも関わる重要な要素であることは事実です。インターネットで掲載されている天気を見て右往左往するのではなく、自分で天気がわかったらいいな、ということで西穂山荘支配人の粟澤氏の主催する「やさしい山のお天気教室」に参加したのがきっかけで、もう少し気象について知りたいと思うようになりました。

書店に行って色々見たのですが、結局のところ気象予報士の勉強をした方が早いという結論に達しました。

まあ、ここら辺のことはいずれ合格したら改めて書こうと思っていますが、とにかく3回目の気象予報士の試験が近づいています。


気象予報士の試験は「一般知識」「専門知識」「実技試験」で構成されており丸一日かけて実施されます。一般知識と専門知識はそれぞれ合格すると1年間は試験が免除されます。実技試験は一般知識と専門知識両方が合格しないと採点すらしてもらえません。

一般知識というのはいわゆる物理学の部分ですね。大気の構造、熱力学、降水過程、放射、運動などなど。マークシート方式です。
例えばこんな問題が出ます。

問 太陽放射について述べた次の文(a)〜(c)の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から一つ選べ

(a) 太陽放射の全エネルギーの約半分は可視光線域にあり、残りのほとんどは赤外線域にある。

(b) 地球全体について年平均すると、太陽放射に含まれる可視光線は、雲やエーロゾルがないときでも、地球大気を通過する際に、主に水蒸気と二酸化炭素により約20%が吸収される。

(c) 地球全体について年平均すると、地表面に吸収される太陽放射エネルギーは、大気上端に入射した太陽放射エネルギーの約70%に当たる。

一般知識は全15問で合格は10〜11問です。


専門知識は一般知識の上位に当たる試験です。
こちらもマークシート方式ですが、内容としては気象観測の知識、気象レーダー、気象衛星、数値予報、短時間予報、短期・中期予報、アンサンブル予報、予報精度の評価、台風、様々な気象現象、気象情報と気象災害などなど

例えばこんな問題が出ます。

問 4次元変分法を用いた気象庁の客観解析について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ

(a) ラジオゾンデによる定時の構想観測データは精度が高いため、観測地点の直近の格子点では、この観測データそのものを解析値としている。

(b) 解析対象時刻の前後に観測した衛星のデータは、解析対象時刻の観測データとみなして解析を行う

(c) 1時間降水量のような数値予報モデルの予報変数でない観測データは、それを元に水蒸気量などを統計的に推定してから解析に用いている。

(d) 物理法則に基づいた数値予報モデルの時間積分結果と観測データが整合するように解析を行っているので、3次元変分法より現実の大気の状態に整合した解析が得られる。

こちらも全15問で10〜11問が合格ラインです。


そして、核心ともいうべきなので実技試験。これは実際に10〜15枚程度の天気図や補助資料が配られ、これらを参考に与えられた設問に回答していくというもの。回答は数値や文字で記入するものや、特定の文字数で記述する問題です。

例えば・・・問5(2) 名瀬を通過した前線の種類と、前線が通過した時刻を答えよ。また、その時刻に通過したと考えられる理由を、風向と気温に着目して30字程度で述べよ。 ・・・と行った感じです。これに答えるためには図として配られた毎正時の地上風と気温の時系列図、名瀬で観測されたエマグラムを分析する必要があるわけです。 そうすると「寒冷前線」「18時に通過」「風向が南から西北西に急変し気温の降下が始まったため」という回答を得ることができるわけです。


実技試験は1と2があり、それぞれに題目が決まっています。「台風」とか「温帯低気圧」とか。
そして何よりも実技試験は時間がない。試験時間は75分ですが普通にやるととても75分では終わりません。ですからいかに効率よく回答していくかということが求められます。
例えば「低気圧の中心気圧を記載せよ」「日本の南に発令されている警報を記述せよ」などといった設問は見た瞬間に回答用紙に記載できるようでなければなりません。時々500NMと天気図に書いてある情報を答えさせるのにkmを使わせるというひねくれた問題もあるのでそこは要注意です。
一般知識、専門知識を十分に把握していないと回答に時間がかかる、または回答できない設問も散見されます。一般知識と専門知識が合格しなければ実技は採点対象外だというのも納得できます。


試験は年2回。2019年8月25日(日)に開催される気象予報士試験は通算52回。

これが終われば山に登れるでしょう。

頑張ります。



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