2019年5月14日の天候に関する考察



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2019年5月13日〜14日(アタック日は14日)の登山における天気を各種予報図より分析する。






FXXN519 初期時刻2019年5月7日21時

500hPa高度場をみると13日21時の時点では北海道から関東にかけて5700m〜5760m付近でリッジ、このリッジは14日には5340m〜5640mのリッジと一体となり日本の東まで進む予測となっている。
このため14日の穂高連邦はリッジの後面のトラフとなり好天は期待できない。






FEFE19 初期時刻2019年5月7日21時

500hPaのリッジに対応した高気圧が13日21日は千島の近海、14日21日には日本の東まで進む予測。とりわけ14日は高気圧からの縁辺流により北日本から九州にかけての幅広い範囲で降水を予測。降水帯の移動を外挿すると現時点では14日の朝の穂高連邦は降水にならないものの確実に降水帯は接近しているので目的地は独標までとすることが望ましいと予測。






FXXN519 初期時刻2019年5月8日21時


左図5月13日、右図5月14日

5月14日の500hPa5700mの高度場が大きく変化。中部山岳地帯に予測されるトラフは前回初期時刻より浅まっている。穂高連邦は西北西〜ゾーナルの流れに変化している。







FEFE19 初期時刻5月8日21時

前回初期時刻と比べると14日21時の高気圧の位置が南西に移動している。降水帯の中心が西日本へ移っているが中部山岳地帯の降水帯はそのまま継続。地形的な上昇流による局地的な降水も視野に入れる。






FXXN519 初期時刻2019年5月10日21時


左図5月13日、右図5月14日

前回初期時刻と比べると5月13日に中国東北区付近に新たに寒冷渦を予測させており13日21時から14日21時にかけて日本列島付近の500hPa高度場の南北蛇行が大きくなっている。
14日の日本のはるか東にあるトラフの位置をかなり西寄りに変化させており地上の高気圧の位置にも影響するためFEFE19で確認することとする。
中部山岳地帯では引き続き西北西〜ゾーナルの流れ。
寒冷渦そのものは発達しない予測だが、引き続き最新の初期時刻の予報図の変化を注視することとする。






FEFE19 初期時刻2019年5月10日21時

前回初期時刻と比べると14日の日本の東にある高気圧の位置をさらに西側に予測させている。西日本から沖縄付近の降水帯に大きな変化はないが東シナ海から大陸にかけての降水帯は変化している。
14日の中部山岳地帯の降水帯は引き続き予測されており、高気圧の位置からして南の海上からの暖湿気流入による地形的な降水の可能性が大きいと判断。今後FXFE系列の予報図の範囲内になるため500hPaの気温や流れに注視することとする。






FXFE504 初期時刻2019年5月12日21時
FXFE5784 初期時刻2019年5月12日21時
FXJP854 初期時刻2019年5月12日21時


中国東北区付近の500hPa5400m付近に寒冷渦があり-24℃以下の寒気を伴ったトラフが日本海まで伸びている。 中部山岳地帯では500hPaで-18℃を予測。
一方、850hPaの相当温位は中部山岳地帯で315K以上であり温位は297K(簡便的に9℃+15を絶対温度に変換)で差は18Kとなり水蒸気量は非常に多いが風速は10KT程度であり水蒸気フラックスは大きな値にはならないと考えられる。
日本海中部に-36hPa/hの鉛直P速度の負の局値があり総観規模では上昇流が支配しているが穂高連邦では総観場での上昇流よりもむしろ地形による局地的な上昇流を考慮する。
なお穂高連邦付近のCAPE指数は低い値を示しているが700hPa付近に乾燥帯が存在するため3000m以下の山岳地帯での安定度をCAPE指数で判断するのは適切ではなくCAPE指数には重きを置かないこととする。

以上のことから14日朝の穂高連邦は下層の南寄りの暖湿気が流入し地形的な外力が働き局地的な上昇流となる。成層は不安定であり自由対流高度を超える外力が働けば対流雲が発生し局地的な降水、突風、落雷などの危険が発生するものと予測する。ただし手持ちの資料では平衡高度が不明で、対流雲が発達したとしても雲頂高度を推定することができないので発達の程度は不明である。






実際の気象状況

14日07時18分現在の笠ヶ岳方面の空模様を観察すると雲底高度が低く笠ヶ岳の稜線は目視不可能。







14日08時現在、西穂高岳の稜線も上昇流により露点温度を超えて凝結が始まっている。この後、遠くから雷鳴が聞こえ10時前から降雨となった。






解析雨量図(06時30分から30分ごと)




10時前後から穂高連邦は降水帯に入った。解析雨量では穂高連邦付近はいずれもR1<5mmで、局地性を考慮したとしても際立った発達はなかった。

輪島の2019年5月14日09時のエマグラムをみると(図略)、ほぼ全層に渡って湿っており400hPa付近に逆転層が認められる。また、気温の状態曲線は湿潤断熱線にほぼ近い形で推移しており、自由対流高度は850hPa以下、平衡高度は450hPa程度と考えられる。このため穂高連邦付近では対流雲は発生し降水があったものの雲頂高度はあまり高くなく極端な発達はしなかったものと推測する。