気象衛星画像




よくテレビの天気予報で気象衛星ひまわりの気象衛星画像が出てきます。最近ではカラー版もありますが、予報業務で使う場合は従来の白黒画像を使った方が解析しやすいです。

さて、本題に入る前に・・・

気象衛星ひまわりは、地球の自転と同じ速さで地球を周回する「静止衛星」な訳ですが、どこにいるかご存知ですか?
日本の気象衛星だから日本の上空なのでは?と思われる方も多いでしょう。


気象衛星は赤道上空を周回しています。


ですから、実際にひまわりから送られてくる画像はこんな感じです。

日本付近は高緯度(北極に近い方)に位置しますので、画像的には多少劣化することになります。


気象衛星は「静止気象衛星」と「極軌道気象衛星」の二つに分けられます。

静止気象衛星はひまわりを含む、世界各国が打ち上げた衛星です。これは地上36,000Kmの赤道上空を地球の自転と同じ速度で周回します。日本の他には米国、欧州、インド、中国、韓国の衛星があり、地球の全地域を網羅しています。

極軌道気象衛星は北極と南極を起点として緯度方向(つまり赤道に対して垂直方向)に周回する気象衛星で、高度850Kmを1日約14週しています。制度の良いデーターを得られますが静止気象衛星に比べると観測範囲が狭いという欠点があります。

これが気象衛星による観測網です。


では、実際の気象衛星画像についてです。

日本の気象衛星ひまわりは大きく分けて3種類の画像データーを送信しています。それぞれ、

①可視画像
②赤外画像
③水蒸気画像

に分かれており、すべて気象庁のホームページで公表されています。
このうち、赤外画像と水蒸気画像は赤外線の放射を利用した画像、可視画像は太陽光の反射、つまり宇宙船から実際に見える画像になります。従って夜は可視画像は真っ黒で何も見えません。

【可視画像】
可視画像は前述の通り実際に目で見える雲の様子になります。
この画像で高度の低い場所にある雲(中・低層雲)や厚い雲が白く映ります。

【赤外画像】
雲が放射する赤外線の強さを画像に変換したものです。温度が低いほど白くなるように調整されており、上層の温度の低い雲ほど白く映るようになっています。

では実際に両方の画像を見比べてみましょう。


画像出典:気象庁HP
可視画像



画像出典:気象庁HP
赤外画像


なんだか気象予報士の試験問題のようになってしまいましたが、両方の画像とも、朝鮮半島から中国華中かけて雲がかかっているのがわかります。ですが、赤外画像を見ると朝鮮半島付近が周囲と比べて白く輝いているのがわかります。赤外画像は雲の高度が高く温度が低いほど白く映りますから、朝鮮半島付近にかかっている雲は発達した積雲(積乱雲)である可能性が高いです。
実際に高層天気図を見てみると白く写っている部分はシアラインという風向きの違う風同士がぶつかり合っている部分に対応しています。風と風がぶつかるとお互いに行き場がなくなり上に向かって吹き上がります。このため上昇気流となり雲の高度は高くそして温度が低くなります。

従って可視画像と赤外画像の両方を見比べてそこに写っている画像の特徴から雲の種別を判定します。この二つの画像だけでも上空の状態がよく把握でき、予報業務では重要な資料となっています。



【水蒸気画像】
水蒸気画像はある程度気象の知識がないと誤った判断をしてしまうので注意が必要です。

まず水蒸気画像は中・上層のトラフや寒冷渦、リッジ、ジェット気流の解析、トラフやリッジの深まりや浅まりの推定に使われます。また、水蒸気画像は雲の有無ではなく中・上層の水蒸気の量に応じて、多ければ白く、少なければ黒く映ります。
水蒸気画像で黒く見える領域を「暗域」と呼び中・上層が乾燥していることを意味しています。反対に白く見える部分を「明域」と呼び湿っていることをことを示しています。

暗域が時間とともに暗さを増すことを「暗化」と言います。暗化域は下降域(沈降場と言います)に対応しておりトラフの深まりや高気圧の強まりを表しています。

従って直接的な雲の状態を見る画像ではありませんが、中・上層の大気の状態を把握するための画像であり、また中・上層の大気の状態を把握することがこれから先の天気を予測するのに重要な要素となりますので、予報業務としてはなくてはならない情報です。また、水蒸気画像は変化を見る画像でもありますので連続した画像をつなげて動画にすると一層効果的です。

なお、水蒸気画像では低層の状況を把握することはできません。


画像出典:気象庁HP
水蒸気画像


これが水蒸気画像で、先ほどの可視・赤外画像と同時刻のものです。だいぶ様子が違うのがわかると思います。


このように3種類の気象衛星画像と天気図(実況図)を使い分けることにより、今現在の大気の状態をかなりの程度把握することができます。この作業が今後の気象を予報する上で非常に重要な行程になります。